第三百十九話 THE BOSS
決勝戦の決着から数時間後、ウォレス辺境伯家の屋敷の執務室には二人の男がいた。
一人は、黒い肌とぶくぶくと太った体格が特徴的なウォレス辺境伯家当主にして、「ブリーダー」のボスである「ブッチ・ウォレス」
そして、彼の目の前で地面に頭を擦り付けているのは、先ほど無様に大敗を喫したばかりのアルカイドだ。
「......なあ、アルカイド」
「......申し訳ございません、ボス!!!」
「はあ....あのノウキン・バカケンシとかいうふざけた名前をした剣士に負けるだなんて、闘技場の王者にあるまじき失態だ」
「....お、お言葉ですが、あの剣士は相当な猛者で...」
「んなことはわかってんだよ、この負け犬野郎!!!!!そもそも、テメエがダックマンのクソ野郎にハメられたのが原因だろうが!!!!ルイスの綿棒みてえな体がそんなにヨかったのか!?」
「も、申し訳ございません!!!」
「はあ......どうすんだよ、賭けに大負けしちまったのはまあいい。あまりにも勝ちすぎたやつをぶっ殺せば済む話だ。だが...問題は優勝特権だ。ぽっと出の流れモンに何でも願いを叶える特権を与えるなんてのは辺境伯家の家門に泥を塗るコトになる....どうすりゃいいと思う?」
「そ、それは....奴らを皆殺しにする....とかでしょうか?」
「テメエの脳みそも『王冠』と一緒に壊れちまったのかっ、ああ!?それができなかったから、テメエは無様を晒したんだろうが!!」
「し、失礼いたしました......」
「はあ....ったくよお.....とりあえず、表彰式は中止だ。代わりにストリッパー共を呼んでダンスでもさせとけ」
「しょ、承知しました!!」
「はあ....昨日からベガの野郎とも連絡は取れねえし.....くそっ!!」
ブッチ・ウォレスはアルカイドの横っ腹を蹴り飛ばす。
「.....ぐっ!!」
「とりあえず、明日の昼.....奴ら四人をここへ呼び出せ.....それまでにどうするか考えておく」
「は、はい!!」
そう返事をすると、アルカイドは逃げるように部屋を出る。
BOSS:ボス