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第三百十八話 THE MISSON

控え室でホワイトは、マフィアの構成員が身につけるチープなスーツを着用し、数ヶ月ぶりに髭を剃り、ボサボサの髪をワックスで整える。

「よし...んじゃ行きますか」

そうして、ホワイトはサングラスをかけ、控え室を出る。


その後、近くにいる警備の騎士に話しかける。

「よお....騎士殿、アルカイドさんを探してんだが..どこにいる?」


「......パンケーキは?」

騎士はぶっきらぼうにそれだけ言う。


「マスタードとケチャップだ」


「アルカイド様なら、この道を突き当たりを右に曲がったとこにあるVIP室にいらっしゃる」


「サンキュー」






王者アルカイドは焦燥感に駆られていた。


始まりはつい先日のことだ。


ダックマンの用意した女と寝た次の日の朝、彼が肌身離さず持っていた八百長のための腕輪が女と一緒に消えていた。

それを即日ボスに報告したものの、一向に状況は好転しない。


ここまでの相手は、アルカイド.....そのバックにつく領主ウォレスや彼が所属する「ブリーダー」に忖度し、ことなきを得ていたが.....今回の相手はそうはいかない。奴は本気でこの大会の優勝を目指す流れ者だという....しかもすこぶる強い。

アルカイド自身も剣の腕だけで言えば、組織で一番だ。しかし、アルカイドは今までの試合での様子を見て【剣豪】に敵わないと言うことを世界で一番理解していた。



試合まで数時間....もし、腕輪が戻らなければ....試合は中止し賭けはなかったことにする。それが組織の判断だ。

あのベガにすらも頭を下げて腕輪の奪還を頼んだという屈辱や、万が一、中止した場合にボスから受ける「罰」、様々なものが複雑に絡み合って彼の心を蝕んでいた。


「くそっ!!.....ベガの野郎は連絡よこさねえし、試合はもうすぐだしよお.....くそっ!!!!」

アルカイドは手近にあったグラスを側に控える部下へ投げつける。グラスが部下へ命中し、派手な音を立てて割れる。



そんな時であった、部屋の扉がノックされる。

「ちっ!!誰だ!!こんな時に!!!!」


彼の部下が外へ出て来客へ応対する。


「アルカイド様....どうやら、組織の実行部隊が『王冠』を発見したそうです!!!」


「そ、そうか!!!よくやった!!!早く入れろ!!」


「承知しました」


そうして部屋に入ってくるのは、胡散臭そうな雰囲気を身に纏う男。


「どーも、アルカイド様.....これがあなた様の探してた『王冠』だろう?」

そう言って男は黄金の腕輪を懐から取り出す。


「それだ!!!よくやった!!!」



「へへ、どーも」


アルカイドはそれを奪うように受け取ると、安心したのか猜疑心が湧く。そうして、その怪しげな男に問いかける。

「おい....お前、見ない顔だな.....コードネームは?」


「スワンさ」


「スワンね.....新入りか?」


「ああ、つい先日....ポインターさんに誘われたんだ」


「この【王冠】....どこで見つけた?」


「これは....街のガキンチョがおもちゃと間違えて拾ってたらしい....」


「....道理で見つからねえわけだ、まさかガキが持ってやがったなんてな.....ガキとその家族にしっかり()()()はしたんだろうな?」


「ああ」

そう言って男は首を掻き切るジェスチャーをする。


その答えに満足したアルカイドは、ぶっきらぼうに言い放つ。

「なるほどね.....あの白髪野郎が好きそうな男だ。.....まあいい、お前もう帰っていいぞ」


「んじゃ、失礼するぜ」


そんな彼をアルカイドは呼び止める。

「おい、待て」


「....なんですかい?」


「言葉遣い.....改めろよ。今回はその功績に免じて許してやるが....立場を弁えろ」


「.......承知いたしやした」

そうして、男は部屋を後にする。


ホワイトは着ていたジャケットを脱ぎ捨てゴミ箱へ捨てると、鞄から取り出したいつものローブを羽織る。

「うひゃー....しっかし.態度が悪い奴だなあ.....まあ、俺が細工した腕輪を使おうとして顔面蒼白になる姿を想像したら....溜飲も下がるってもんよ.....あの野郎、あの腕輪がもう、ただの腕輪になっちまったなんて夢にも思わねえだろうな」




そうして、ホワイトは観客席に座り、試合の開始を待つ。

「んじゃ、特等席で見させてもらおうかね....最高のエンディングを」




MISSON;ミッション、もしくは任務

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