第三百十五話 THE LETTER
翌朝、俺たちは宿の談話室で話し合いをする。
昨夜もなんとなく決めてはいたが、俺は怪我の療養も兼ねて宿で休憩。リイはボディーガードとして宿へ滞留。ホワイトさんと義輝さんは闘技場へ行くという感じでまとまった。しかし、依然として不安は残る。ウォレスが約束を権力に物を言わせて反故にしないかというものだ.....それもなにか対策を考えなければならない。
そんな話をしてると、キッチンから現れたリーナが義輝さんへと話しかける。
「あ、あの!!剣士様.....!!わ、私、剣士様が優勝できるように、お、応援してます!!!!!!」
「へえ....イイじゃねえか、モテるねえ〜」
「青いですな.....」
それを聞いた義輝さんは一瞬の逡巡ののち、リーナの頭を撫で、答える。
「......うむ、私は流れ者ゆえ、お前の心には応えてやれぬが..........献身、心より感謝している」
そうして、懐から何かを取り出して渡す。
「こ、これは......」
「京の白竹堂の職人が作った扇である。かつて元服の儀の際に献上されたものである。お前の献身への礼だ」
そうだけ言うと義輝さんはホワイトさんを連れて宿を出る。
「不器用な方ですな....」
「ええ、でも....あの娘、嬉しそうですよ!」
リーナは義輝さんからもらった扇を胸に抱き嬉しそうにしている。
そうして昼過ぎ、そろそろ決勝戦が始まると言う頃、俺とリイは近くにある「クールウォレス」というバーで食事をしていた。ベガにやられた傷が痛むため、アルコールで痛みを和らげたらというリイ提案で俺は昼間から飲酒をしている。
「いやー、昼からお酒飲むなんてなんか悪いことしてる気分になりますね」
「漢の『食貨志下』では『酒は百薬の長』とされております。薬を飲んでいると考えれば、何ら悪いことではございますまい」
「さっすが!リイさんは物知りですね!!」
そんな俺たちの耳に、酔っ払いの雑談が耳に入る。
「いやあ.....歌姫ミア....やっぱりウォレスの野郎と寝てんのかなあ.....」
「ちげえねえ....ウォレスに見初められて断るなんざできやしねえよ...」
「ちくしょー!!」
「......」
俺は知り合いの陰口のような話に少々気分を悪くする。
「著名人の流言飛語.....所詮は酒飲みの戯言ですな」
そんなとき、俺はシャツの胸ポケットの中身を思い出す。
「あっ!!!」
「どうなさいましたか?」
俺は公演の後にミアから手渡された紙の存在を思い出す。ここ数日のドタバタですっかり忘れてた。
俺はそれを取り出し、読んでみることにする。
そこには彼女の宿の住所と滞在期間、そして端の方にキスマークが付いている。
ご丁寧に「貴方の心を蕩かしてあげる♡」なんていうメッセージ付きだ。
すると、俺の頭の中にイマジナリーアンジーが出現する。
彼女はプンプンと怒りながらも、腕は剣の柄を握り潰さんばかりの状態だ。
『久しぶりだね、アンジー』
『お久しぶりです!!.....じゃなくてっ!!あの....これはギルティですよね?他の女からのキスマーク付きのラブレターなんて破り捨ててくださいよ!!大体....『蕩かしてあげる』ってなんなんですか!!!その女狐のこと、私が溶鉱炉に投げ込んで、文字通りドロドロに溶かしてやりましょうか!!!』
まじでごめんなさい!!マジで、前も言ったけどアンジーは可愛い系だから!!アンジーが一番だから!!そんな弁解をしながらも、俺は一度は会ってみようかなと考えていた。
「.....【主人公】さん、恋文でしょうか?」
リイが眉をひそめながらそんなことを聞いてくる
「違いますよ....ただのからかいですよ」
LETTER:手紙