第三百十四話 THE LUCK
俺たちが今いるのは宿の俺の部屋。
ホワイトさんの部屋は未だに散らかっており、義輝さんの部屋は先の一件でホワイトさんが立ち入り禁止。
そういうことで、今回は俺の部屋に集まって話し合うことになる。
闘技場の5Fに併設されたバーガー屋でテイクアウトした食事を片手に会議が始まる。
「なんか4人で顔を合わせるっていうのも久しぶりですね」
「たしかにな...一週間ぶりとかじゃねえのか?」
「不思議ですな....つい数年前までは別々の場所、時代で旅をしていたとは思えません」
「.......リイの申す通りであるな」
「はあーー!!【剣豪】がそんなこと言うなんてなあ!!!」
「.......悪いか?」
「べつに、そうは言ってねえだろ」
「じゃあ、本題に入りましょうか!!」
「ああ、まずは闘技場組の話から聞こうかね」
「はい!!俺たちは.....」
そうして俺たちはベガとの戦いや第二試合の相手や司会の件なんかを説明する。
「.......なるほどね、そっちもそっちで結構大変だったわけだな」
「それにベガという男.......逃してしまったのは痛手ですね」
「ああ、リイの言う通りだ......【主人公】を追い詰める戦闘能力に加え、私たちを引き離す狡猾さ....奴の後ろ盾を含めて厄介な敵だ」
「まあ、今は負傷してお得意の弾丸も使えねえなら脅威半減だがな....お手柄だぜ、小僧」
「どうも....」
「では、次は私たちですね」
そうして、八百長のシステムやマフィアと領主の癒着、『王冠』の正体なんかを共有される。
「つーことで、明日の昼までに『王冠』探しだ」
「時間はあまり残されておりません....この話し合いが終わり次第四人で捜索を開始いたしましょう」
「ああ、悪いが【剣豪】もついてきてもらうぜ。小僧のボディーガードだ」
「うむ」
「最悪の事態として、八百長を防ぐことができないまま足利殿に試合をお任せするという可能性もございます」
「問題ない.....私は斯様な卑怯者には決して負けん」
「頼もしいね」
「................」
「どうなさいました?【主人公】さん、先程から黙っておられるようですが......どこか体調でも?」
「いや、あの....実は.....」
そうして俺は懐から黄金に輝くバングルを取り出す。
「【主人公】さん....それは......」
「おいおい.....マジかよ.......」
「...........」
「すいません.......いつ言い出そうかと機会を伺ってたら言いそびれちゃって.....」
それをホワイトさんとリイさんがじっくり鑑定する。
「匂い、重さ、質感.....まちがいなく金製です」
「ああ、魔術的な細工も前情報通り.....本物だ」
「あのチキン屋の前で拾った小箱が王冠だなんてな.....あのアヒル口野郎、アヒルじゃなくて幸せの青い鳥だったってわけかい」
「すごいラッキーですよね!....まあ、そのせいでベガに襲われたんですけど...」
「勝てば官軍.....という言葉もあるだろう」
「足利殿のおっしゃる通りです」
「こりゃあれだな....リイの旦那の言う通り、今日は観光でもよかったな」
そうして『王冠』の使用方法なんかはホワイトさんに考えがあると言うことで彼へ預け、いつも通りの飲み会へと移行する。といっても誰も酒を飲んではいないが。
「いやー....すっかり冷めちまったが....バーガーは美味えな!!」
ホワイトさんはそう言いながらチーズバーガーを頬張る。
「うむ.....美味であるが....焼き魚を食いたい」
義輝さんはフィレオフィッシュみたいな白身魚のバーガーを齧りながらそう呟く。
「たしかに、少々味の濃いものばかり食らいすぎてる気がしますな」
リイはマヨコーンピザを頬張りながら同意する。
「はは...たしかに、胃もたれしちゃいそうですね」
そう言いながら、俺の手にもホットドックが握られている。
「ったくよお....老人みてえなこと言いやがってよお!!」
「そういえば....魚といえば、義輝さん、ここの娘さん...リーナさんでしたっけ?に、串焼きもらってましたよね!!」
「【主人公】、お前は余計なことを.....!!」
ホワイトさんは水を得た魚のように義輝さんの肩をツンツンつつきながら彼を弄る。
「へえ〜......さっすが、将軍様は貢がれ慣れてるねえ〜」
「ホワイト......」
「ですが...ここまでよくされては何か御礼を致した方がよろしいのでは?」
「たしかに、リイさんの言う通りですよ!!」
「........何をすれば良いのだ、偏諱でも与えればよいのか?」
「ちょっ!偏諱って!!」
義輝さんのそれを聞いて俺たちは大笑いをする
「武士じゃねえんだからよお!!....いや、お前は武士か!」
「本当に愉快な方だ!!」
「ではなんだ....茶器か?」
「そういうのじゃなくても....ちょっとした雑貨とか....美味しいものとか....」
「....そうか、何か選んでおこう」
その後はベガの真似をして、暗号を四人で考えたりして、会はお開きになった。
偏諱を与える:主君や天皇、将軍が、功績のある家臣や臣下の元服時(成人時の儀式)に、主君の実名の一字をその家臣に与えること