第三百十三話 THE CROWN
短いっす
魔術師と獣人は裏通りを進む。
「次で三軒目でしょうか?」
「ああ....こりゃあれだな、下っ端どもに聞いても核心を突くな情報は手に入らねえな」
「ええ、ですが....先程の構成員から得た情報によれば、次の溜まり場には幹部の一人であるディアーという方がいらっしゃるそうです」
「ああ、そいつに話を聞こうかね」
そうして、彼らは慣れた手つきでダイナーの入り口を塞ぎ、中の構成員たちを拘束する。
途中でボウガンを使って抵抗してきた一際大柄で、毛深い男を見やりながらホワイトは口を開く。
「なあ、あんたがディアーさんかい?」
「......そうだと言ったら?」
「闘技大会の八百長の秘密について教えてくれるかい?」
「言ったら、俺が組織に消されちまう....からなあ..言えねえよ」
ディアーは口を割ろうとはしない。
それを黙ってみていたリイが、手近にいたチンピラの頭を握り潰す。頭蓋はトマトのように弾け、あたりの鮮血が舞う。
「ディアー殿....貴方は一つ勘違いをしていらっしゃる。今死ぬか、後で死ぬか、です」
「こ、この獣人野郎!!何しやがる!!!頭おかしいんじゃないか!!」
リイはホワイトの代わりにディアーの前のしゃがみ込むと無言のまま、ディアーの指を口に含み、焦らすかのようにゆっくりと口を閉じる。指の筋繊維や骨がブチブチと嫌な音を立てて千切れていく。
「...........」
「......痛っ!! こ、くそ...なにしやがんだ!!俺の指があああ!!!.
リイはそれをペッ...と、地面へ吐き出し、再度口を開く
「私は少々、空腹でして.......なにか、私の腹を満たしてくださるようなものがなければ、困ってしまいますな.....」
しかし、なおもディアーは強情な態度を貫く。
「やれるもんならやってみろ!!!ベガの野郎に目ん玉くり抜かれて、そこに唐辛子突っ込まれるよりはマシだ!!!」
「ほう......」
そう言うとリイは、自身の爪を鋼へと変貌させ、ディアーの右目へと突っ込む。
「ぐあああああああ!!!!」
そうして、くり抜いた目玉を地面へ投げ捨てると、再度語りかける。
「次は、貴方の肝臓をいただきましょうか......私、鹿のレバーが大好物でして......」
そう言ってリイは舌なめずりをして、ディアーの肝臓の辺りに爪を這わせる。
ディアーは体をガタガタ震わせながら、粗相をしながら大声で命乞いをする。
「わかった!!わかった!!.....から......言うから勘弁してくれ!!」
「最初からそうされておれば、このような痛い思いをすることもなかったと申しますのに....」
そうして、ディアーは自分が情報を話したことは誰にも言うなという執拗な念押しの末、情報を話し始める。
「こちらの眼球と指ですが...お返しします。治癒術師の元へ持っていけば元へ戻る筈です」
そうして、情報を聞き出した二人はダイナーを後にする。
「悪いな...リイの旦那、さっきから拷問を任せっきりで」
「いえ、これは単なる役割分担です。その代わりに、ホワイト殿は私にはない知恵を発揮していただければ」
「そう言ってくれると助かるよ....」
「......これで八百長の全貌を掴めましたな」
「ああ、この街のマフィアが持ってる『王冠』.....これを装着することで闘技場の地下にある魔力炉から魔力の供給を受け、インチキみてえな強さで敵を倒す........たしかに魔術師や獣人の参加を禁止するわけだ。そんな不自然な魔力の流れ、見破るのなんざ朝飯前だしよ、亜人....特に獣人みてえな鋭い感覚の持ち主には気付かれちまう」
「ええ、おっしゃるとおりです。あとはその『王冠』を回収するだけ....でしょうか」
「ああ.....だが、それが一番骨が折れる」
「決勝戦は明日の昼.....一度宿へと戻り【主人公】さんと合流し三人で探しましょう....」
「ああ、つーか....そんなインチキをされてたとしても【剣豪】が負けるとは思えねえがな」
「それもそうですな....では、本日は観光でも致しましょうか?」
「リイの旦那もそういう冗談言うんだな」
CROWN:王冠
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