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第三百六話 THE DINER

そうして、大会の開幕の花火が上がる頃、二人の男は裏路地にある、なんの変哲もないダイナーで朝食を摂っていた。

胡散臭い風体をした魔術師風の男が食すのはホットドッグ、大柄でフードを目深に被った獣人の男の前には骨付きのグリルチキンとグリーンサラダが提供されている。

「んじゃ....Mr.タイガー、手順を確認するぜ......まずは目標地点に侵入し、俺が唯一の出入り口を氷魔術で塞ぐ。その後、俺が大声をあげる。それを合図に全員ノす。.....簡単な仕事だ」


「.......承知しました、Mr.スマート」

そうして二人は食事を進める。

「このホットドッグ.....悪くねえ」


「この鶏肉も歯ごたえがあって美味です.....野菜はお世辞にも新鮮とは言えませんが」


「同感だ.....茹でてあるのが幸いって感じだな」


「ええ...これでは道中に食した野草の方が幾分かマシでしょう」


男はすると、飄々と何かの話をまるで吟遊詩人のように語りだす。

「ところでよ、こんな話を知ってるかい?......あるところに狐と鷲が住んでいた。二匹は友達で、同じ木に住むようになったんだ。鷲は木の頂上に、狐は根元の茂みに巣を作り、子を生み、育てた。ある日、いつも通りに狐が狩に出かけた.....すると、その日の狩りが上手くいかず、窮していた鷲は何を思ったのか巣で母親の帰りを待っていた狐の子供を攫って雛と一緒になって食っちまったんだ。帰ってきた狐は、全てを悟ったものの、遥か頭上に居を構え、翼を持つ鷲への復讐なんて到底できっこねえと諦めた。

そんなある日のことだ、とある村で行われた儀式の生贄として山羊が焼かれていたんだ....その山羊の肉を失敬した鷲だが、運の悪いことに山羊の肉にはまだ火種が残っていたんだ.....そうとも気付かず巣にそれを持ち帰ったわけだが、小枝や藁で出来た鷲の巣は瞬く間に灰となった、すると、まだ羽根が生え揃っていなかった雛は地面へと落下する。それを見た狐はすぐさま鷲の雛を胃袋に収めたっつう話さ」


「.....なるほど、鷲はその生まれ持った翼ゆえに決して狐の逆襲に遭わぬと高を括っていたというわけですね」


「ああ、そういうことだ......んで、俺たちは狐、この街のチンピラどもは鷲だ....もう連中は俺たちの舌の上さ」


「ははは!.....彼らはまんまと山羊の肉に食らいついてしまったわけですな」


そんな時、獣人がふと質問をする。

「ところで、その溜まり場というのはどちらに?」


「ああ.....それはな................」


その瞬間、ダイナーの扉が凍結する。


「ここさ」


「命が惜しければ、全員その場を動くな!!!!」


朝の穏やかな空気は一変する。







数時間後、外套とローブを真っ赤にした二人の男が裏路地を歩く。

「......この問題、相当根深いかもな」


「ええ、もう少々裏取りは必須でしょうが.....全貌が見えつつあります」


「あいつらも何事もないといいんだがな」


「それは杞憂でしょう」

DINER:アメリカやカナダでよく見られるカジュアルで安価なレストラン


狐と鷲:イソップ寓話からの引用

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