第三百四話 THE TELEPHONE
エスポワルの闘技場、その5階に併設されたハンバーガーレストラン。そこのカウンターに溶け込むように座るのはベガ。店は一日目の試合を見届けた観客たちで賑わっている。
ベガは喧騒を見つめながら、思考をまとめる
「(あの剣士、強すぎるな......そいつが【主人公】とか言うやつ常に一緒にいるとなると....下手な奇襲や正面突破はこっちの寿命を縮めるだけ.....殺るならあいつの試合中、その数分間に【主人公】を倒して攫う..完璧だ)」
そんな彼の元へウエイトレスがお冷を持って現れる。
「ご注文は?」
「ああ、DXバーガーとポテトのセット、飲み物は麦酒.....あとは、パンケーキをマスタードとケチャップで頼む」
ベガの注文を聞いたウエイトレスの体が一瞬びくりと震える。
そうしてしばらくしてなんの変哲もないDXバーガーのセットがベガの席へ届く。
その後、人混みに紛れるように、店のバックヤードから姿を現した白髪頭の男がベガの隣の席に腰掛ける。
「ベガさん.....どうなさいましたか?」
「ああ、第二試合のノウキンとかいうフザけた名前の剣士の対戦相手を殺して、ウチの実行部隊にいるタートルの野郎とスリ替えろ」
「......承知しました、他には?」
「ああ、タートルに鋼の鎧を着込ませてできるだけ時間を稼ぐように伝えろ....司会のスズドリにも試合を引き延ばすように言っとけ.....それさえ済みゃ、ノウキンを勝たせても良い、ま...殺せるなら殺したほうがいいがね」
「承知しました」
「にしても、ポインター....浮かねえツラしてるじゃねえか」
「ええ、実は先日恋人が死にまして.....」
「へえ...クスリのヤリすぎかい?」
「.........いえ、 病気です」
「ツイてねえな....仕事が済んだら俺も墓参りに行くかね.....顔も知らねえが」
「どうもありがとうございます.....あいつもきっと、喜びます。.....では、失礼いたします」
そう言うと、ポインターは席を立ち人混みへと消える。
「んじゃ、バーガーをいただくかね......こりゃ美味えな、うちのボスもマフィアなんざやめてバーガー屋をやりゃいいのによ....組織のシノギの一つにするにはもったいねえ味だ」
そうベガが独りごつ、
その日の深夜、組織のメンバーの溜まり場が襲撃されたという噂が流れることとなる。
TELEPHONE:電話




