第二十九話 温泉の効能とかって結局信じた者勝ちだよね
「広っっっ!!!」
部屋で荷解きをした俺たちは、汗を流すべく風呂に入ることにした。今回俺たちが泊まる温泉宿「水屋」には名物の超巨大浴場と一定のランク以上の部屋には露天風呂がついている。ちなみに今回の部屋にももちろんついている。そして俺たちが今いるのは大浴場だ。男湯だけで、テニスコート十面分くらいある。ゆうに100を超える人数がいるのにも関わらず、混んでいると言う印象は受けない。ここに来るまでに聞いた話だが、この「水屋」この桃源郷の中にあって「楽園」と称されるほど人気があるらしい。横にいるゴルドも感心といった様子で周囲を見回している。ハンゾーは相変わらずクールだが。
「ゴルドさん、ハンゾーさんめっちゃ広いですね、ここ。今からでも、お金払った方がいいんじゃないですか?」
「ああ、正直予想以上だよ...」
「......広いな」
本当に「広い」という言葉しか出てこないのだ。洗い場で体を流した俺たちは温泉へと向かう。ゴルドはウキウキで温泉の効能が書いてある立札を読んでいる。
「なになに......ここの湯の効能は..疲労回復、美肌、眼精疲労に魔力総量上昇か、色々あるね」
「さすが、有名温泉地ですね」
「ハンゾーにこんなツテがあるだなんて..結構長い付き合いだけど知らなかったよ」
「....まだ、冒険者になる前の頃の話だ。奴の家は地元でも有数の名家でな、そいつの家が賊に襲われていたのを助けてやったのだ。もう、10年以上前の話だがな。」
「ハンゾーさんって昔から強かったんですね」
「.....そんなことないさ、ただ血の気が多かっただけだ」
「今のハンゾーからは想像できないね」
「.....メルトには秘密で頼むぞ」
「え...どうしてですか?」
「..................................弄られる」
なんだこの人かわいいな。
温泉に入りたくなる季節ですね