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第二百九十一話 THE MYSTERIOUS WOMAN

俺たちは宿へと戻り、ほっと息をつく。

今回の部屋割りだが、二人部屋が満室だったということで一人部屋を人数分取ることになった。

俺は数ヶ月ぶりの一人時間を満喫し、この部屋に来る前にホワイトさんたちと交わした会話を思い出す。


「オーケー、今日から第一回戦の開始まで一週間あるわけだがよお....あれだな、情報収集と休息...あとは、セカンドオピニオン....つまり、第二の渡航手段を各自探すっつうことにしよう」

その言葉を聞いた義輝さんはムッとする。

「それは...私が負けるということか?」


「いや違うぜ。優勝商品の割に少ない参加者、何か裏があるかも知れねえ....例えば領主が約束を反故にしちまう、とかな」

それを聞いて俺の脳裏に蘇るのはショウオにいた悪辣な老人の顔だ。....そういえば、俺とリイにかかった懸賞金....どうなったんだろ.........。ともかく、非常に合理的な方針だ。

「それは一理ありますね....となれば四人全員で別行動でしょうか?」


「ああ、リイの旦那のいう通り四人で探した方が効率的だな....んで、たまにここに集まって情報交換だ」


「わかりました!!」

久しぶりの一人行動!!ワクワクしてきた。


「相分かった」


「よしっ!!解散!!!久しぶりに酒場に行けるぜ〜」

おい、それが本音だろ


ともかく、自由行動だ!!


そんなこんなで翌日、俺は街を歩く。こういう場合はどこに行けば良いのだろうか....ハンゾーはどんな風にやってたっけ.....



まあ、初日だし.....エスポワルを知るという目的も含めて今日は散策だ。あ.....「臆病者の石」宿に忘れた.....まあいっか


俺はまだ慣れていないエスポワルの街並みを進んでいくうちに裏通りへ迷い込んでしまう。そこは各所でガラの悪そうな人が合法とは思えない煙を楽しんでいたり、ぐったりと倒れ伏すが点在している。まだ、朝だぞ........

「うわ....治安悪いな.......!?」

それに、何か密度の高い水風船が破裂したかのような音が響いたかと思うと、その正体を考察する暇も与えずに、下卑た声が俺の耳に入ってくる。


ふと見ると、女の人がチンピラに絡まれている。

「なあ、俺と一晩遊んでくれよ」


「嫌」


「そう言わずによお....ちょっとカフェでお茶して話すだけでも....」


「特別な誰かとだったら、しばらく口を閉じてても、気持ちよく沈黙を楽しめる....でも、あなたみたいな下品な男とは話すのすらも嫌」

女性は臆さずに言い返す。


「んだとお!!このアマ....調子こきやがって!!!」



「うわ....マジで綺麗」

そんな風に強気な言葉を言い放つ女性は、黒髪のショートカットと口元のホクロがセクシーな若い女性だ。手足はスラっとしており、控えめな胸も彼女のスタイルにはよくマッチしており美しい。瑞々しい唇は、金剛石迷宮でみたルビーのようだ。正直、今まで見た女性の中で一番美しいのではないのだろうか..........いや、違うんだ、アンジー...一番美しいとは言ったけど、一番好きなのはアンジーなんだ!!本当に。アンジーはそもそも可愛い系だし!!大前提、綺麗と好きは別だ。いや、アンジーも十分綺麗だから!!!なんていうとんでもなく醜い一人芝居を脳内で繰り広げる間にも、男は女性に詰め寄る。

....っと、やばいな、とりあえず助けに入らなければ

「おい、チンピラ.......どけよ」

俺は男と女性の間に割り込む。


「なんだこのガキ!」

男は短絡的に殴りかかってくる。俺はそれを弾く、男は自分の一撃が反射してノックアウトされる。


「あら....どうもありがとう、坊や」

女性は声もまた色っぽい。それはポルノ女優のような色気ではなく、もっと、こう、上手くは言えないが上品なカリスマとも言い換えられるような空気を纏っている。ピグマリオの女神像のような神々しさまで感じる。


「い、いえ、そんな....」

冷静にあろうと務めるものの、声が裏返る。どんなに強くなろうと、俺の根っこはボッチ高校生なのだ。いや、十九になったから年齢的には大学生か。いや、そうじゃなくて、とにかくこういう芸能人みたいなタイプの人とは上手く話せない。


「何かお礼をしないと...」


「い、いや...ほんとに大丈夫なんで........」


すると、先ほどの男の仲間らしき連中が集まってくる。

「おい、坊主、アマ.....あんま舐めてるとヤっちまうぞ」

数はザッと三十程度。やれなくはないが、人死を出す可能性もあるし、俺もこんなくだらないことで怪我はしたくない。

「逃げますよ!!」


「そうね」

そうして、俺は女性の手を引いて走り出す。しかし、地の利はあちらにあるのか、なかなか距離は縮まらない。


......しょうがない


「失礼します!!!」


俺はそう言うと、女性を抱える......お姫様抱っこの形だ。アンジー!!!許してくれー!!!!

そうして、敏捷強化魔術を詠唱する。

「主よ、我が歩みに千里の加護を!」


そうして、俺たちはなんとかチンピラを撒く。

「いやー....危なかった....ダメですよ、女性がこんな裏路地を一人で歩いちゃ....」


「そうね、気をつけるわ」


「...............」


「...............」


「...............」


「...............」


俺たちの間に気まずい沈黙が走る。

そんななか、彼女が口を開く。

「気まずい沈黙。なんでみんな気分よくするために、くだらないジョークを言ったりするのかしら?」


「さ、さあ....わからないです」


「特別な誰かとだったら、その沈黙も苦にならない......違う?」


「お、おっしゃる通りです」


「あなたにもそういう人いるの?」


「は、はい!」


「それはいいことだわ....大事になさいよ」


「ええ、そのつもりです」

そうしてまた沈黙。


「あら、そうだわ...お礼をしないとね」


「い、いや、いいです。マジで」


「そうはいかないわ、そうだ....私が働く劇場の公演を見にいらっしゃい....」

そう言うと、彼女は俺に強引にチケットのようなものを押し付ける。

「大陸一の歌姫が来るって話よ、来て損はさせないわ」


「はは、では、ありがたく頂きます。」


「ええ、そうなさい。公演は今日の昼よ」


「わかりました、ありがとうございます!」


「いいのよ.....じゃあね」

そう言うと、彼女は去っていく。

俺はそれを慌てて呼び止める。


「ま、待って!!」


「なに?」


「あ、あの...名前...聞いてないです!!」


「.......ああ、ミアよ」


「ミアさん!!ありがとうございます!」


「ええ、どういたしまして」

そうして、ミアはさっていく。


いや、まじで.....モデルみたいな人だったな........


にしても、コンサートか.........まあ、いいか!


ラッキー!!ってことで



にしても、さっきの音なんだろう....銃声?.....いや、そんなわけないか







ミアはまんま「パルプフィクション」のユマ・サーマン演じるミア・ウォレスのイメージです


MYSTERIOUS:不思議な


ブクマ感謝!!

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