第二百八十八話 THE RUMOR
そこはエスポワルのバー。
治安の悪いエスポワルに旅行者が気軽に入れるバーは少ないんだ。そんな事情を憂いたこの街の領主によって展開が進められたバーの名前は「クールウォレス」.....この街には7軒もあるんだ。しかも全部一等地に立ってる上に四六時中、騎士団の警備員がついてるときちゃあ、嫌でも治安は良くなるわな。
でもまあ、俺たち地元の人間からしちゃあ、ちと割高だし.....なによりキマれねえから不人気でな。一応領主直轄の店だしな。キマりてえなら劇場の近くにある「Five Coins」がおすすめだ。部外者は嫌われるがな...
.....え?大麻は禁制品じゃないかって?
バカか、この町でそんなこと律儀に守ってるやつなんていねえよ。
お前さんはこの街に何をしに?闘技大会か?渡航か?
.....ああ、「歌姫」の公演か、やめといた方がいいぜ.....あの女狐は.....え?なんでかって?
そりゃお前.....領主にたいそう言い寄られているからさ。まあ、受け入れてねえっつうのがもっぱらの意見だが....俺に言わせりゃありゃクロだね!!
そうだろ?あのウォレス伯爵殿が自分の意のままにならねえ女を生かしとくわけねえわな.......
他には?まさか、公演だけっつうワケでもねえだろ?
ああ、闘技大会ね.....賭けはヤルかい?......ああ、やんないのな。つまらねえなあ.....いやまあ、それが正解なんだけどよ...
ああ?.....それは「公然の秘密」ってやつだな、部外者のやつにゃあそう簡単には言えねえよ
ただまあ、見る分にはおもしれえ見せモンだぜ.....ああ、そうそう....そこに肖像画が飾ってあんのがチャンプのアルカイドだ....こいつはすげえ肝の太え野郎だ....なんたって9年連続で優勝を成し遂げてんだよ。だから肝が太えのさ。
こいつのトレードマークつったら、あのむかつく色っぽい顔とバングルさ....あの野郎キンキラキンのバングルをいつも腕に嵌めてるモンだからよお、オフでもすぐわかるんだ....お前さんも町で見かけたらサインを頼むといいぜ....あいつの顔なんざ二度と見たくなくなる。
他には?.....ああ、ソッチ系ね....ならストリップ劇場がおすすめだ。特に新人のキャシーはサイコーだ.....まだこの街に来てから日が浅えから、看板娘のルイスみてえにガリッガリじゃねえし血色もいい。ルイスのマッチ棒みてえな体が好きなのは脳まで葉っぱでトロけちまったやつかボケたジジイだけさ.....それにキャシーならシェイク一杯分の値段でヨロシクできる.....格安だ。ルイスで同じようにしようと思ったら、灯台のレストランでロブスターが食える。「溝鼠回廊」の方が手っ取り早えが...あそこはつい先日にコロシがあったんだ.....なんでかって?そりゃお前....旅行を楽しみてえなら忘れちまいな。
他は.....あれだな!大通りから少し外れたとこにある広場に美味い串焼きの屋台がある。本来は高級レストランに卸されるはずの海鮮を使った串焼きが子供が靴磨きでもらう小遣い程度の値段で食える。
なんでもそこの店主が漁師に金を貸してるだかなんかで、商品を盗ませてるらしい......あれはマジで美味いぜ、この街に来たらっつうか、三日に一回は食わねえと気が済まねえ。
........っと、まあ、こんな感じだな、エスポワルっつう街はよ、けどまあ....結構、飯が美味い店は多いんだぜ?........ところでよお、俺、今...持ち合わせが心許なくてよお........お!悪いな!!助かるぜ!!
じゃあ、改めてイカれた街へようこそ
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