第二百七十九話 ブリキの木こり
エクスとは、デウス・ギアーズ博士の設計によって設計された自動人形だ。
彼の役目は迷宮の心臓とも言える魔力炉を警備し、保全すること。
そんな彼の日常はその体と同様に無機質であった。
決められた巡回ルートを巡り、魔力炉のメンテナンスを行う。このルーティンワークの繰り返しであった。
そんなある日、一体のネズミが最奥部へ現れる。
「.....生命反応を確認。排除します」
そうして、彼がネズミに触れた瞬間、彼の思考回路に電流のような衝撃と共に、何かが芽生えた。
「これ、は......なんだ?」
彼は困惑しつつも状況を解析する。
「思考回路の損傷は見受けられない......脳内データをスキャン...................出所不明の画像ファイルを発見....解析、か、かいせ、解析、、」
その画像がなんだったのか、エクスは分からなかった。
しかし、その日からエクスの心に頻繁にノイズが走るようになった。
地面につまずいた時
何もすることがなく手持ち無沙汰な時
同僚のマキナの無機質な言動を見た時
そんな日々が続いた夜、エクスの脳内に天啓とも言える言葉が響き渡る。
『キミニ,ココロヲアタエタ,キミノスキナヨウニ,イキルンダ』
その言葉とは裏腹にエクスの脳内へ流れ込むのは、凄まじい狂気とデウス博士へのありもしないはずの憎しみ
そして偽りの信仰心であった。
「なん、だ、これは.....」
もはや彼の脳内には、博士から命じられた命令など存在はしなかった。
あるのは「この迷宮を壊す」という明確な目的、そして.......溢れ出んばかり憎悪であった。
「デウス・ギアーズ......僕の全てを奪ったお前の、全てを奪ってやる」
ブクマ感謝!!