第二十六話 そうだ温泉、行こう
俺たちは今、乗合馬車の座席で揺られている。話は数日前の飲み会に遡る。
「みんな、聞いてほしい。俺も体がだんだん元通り動くようになってきた。が、しかしまだ完全体とは程遠い。そこで、「湯治」に行こうと思う!!!」
「.....うむ、せっかくの機会だ。楽しんでこい」
「いってらっしゃ〜い」
「ゆっくり休んできてください!!」
「いや、多分みんな..そういうことじゃないんじゃ.....」
流石にゴルドが可哀想だし、なんなら若干涙目だ。いくらなんでも薄情すぎやしませんかね皆さん.....。
「あーーー、俺もちょうど温泉に浸かりたい気分ダナー」
「そうか!!【主人公】くん!!一緒に行こう!!」
やべえ、めっちゃ嬉しそう。目が輝いてるもん。
「じゃあ、私も行きます!!!」
じゃあってなんだよ、じゃあって......。ますますゴルドが可哀想になってきたよ。
「なら、私も行こうかしら〜」
「....それでは、俺も行くかな。」
そんなこんなで俺たちは拠点として活動している「マジリハの街」から、馬車でおよそ四日の距離にある「セウントの街」へと向かっている。「セウントの街」はまたの名を「桃源郷」ともいい、世界的な温泉街、歓楽街として有名だ。特に、この地に湧き出る温泉は魔術的な効能があるとされ、数百年前にとある剣豪がこの地を訪れ湯に浸かって超人的な肉体を手に入れたという伝説がある...とメルトさんが教えてくれた。そして、その話を聞いたアンジーはめっちゃ目を輝かしていた。大人びた子だと思っていたが、案外年相応な部分もあるんだな。そんな間にも、馬車は進んでいく。ゆっくりとしかし着実に。
追記 誤字報告ありがとうございます。修正しておきました。