第二百七十一話 ノイズ
映像の再生が終わってもなお、俺たちは呆然としていた。マキナは依然として機能停止状態だ。
まず口を開いたのはホワイトさんだ。
「.......はは、なるほど、ね」
「これで、私たちが抱えていた疑問の大半が解決いたしました」
「ですが、エクスが暴走した理由がまだわからない.....」
「......ただ、はっきりしたことがある。この件もまた、あの悪魔の差金であろうと言うことだ。奴の使徒諸共斬り、エクスとやらを救えば良いのだ」
「ああ、【剣豪】の言う通りだ.....んで、全て終わらせてから、デウス博士の遺した秘密を見る」
「ええ、さすれば、私たちの旅路に道が示されるでしょう」
すると、マキナが意識を取り戻す
「皆様....マキナの機能が停止している間に一体何が起こったのでしょうか?」
どうしたものか、マキナにデウス博士のことを伝えるべきだろうか.......
「なんて言おうかな....その...」
ホワイトさんがなんの躊躇もなく言い放つ。
「単刀直入に言うぞ、お前の父親は死んだ」
「ちょっ!ホワイトさん!!」
「いいや、言うべきだ。どーせ、この後、嫌でも知ることになるんだ」
それにマキナはキョトンとして応答する。
「マキナは自動人形ですので、父親などはおりませんが.....」
それをリイが否定する
「いえ、確かにいらっしゃいました。愛情深い父君が.....」
マキナはハッとしたように言う。......随分人間らしくなったな。
「まさか......父親とは、デウス博士のことでしょうか?」
俺はそれを補強するかのように博士の「高潔な愛」を伝える
「そうだよ、彼は君たちを愛していたんだ」
マキナは一瞬だけ動揺したかのような反応をするも即座にいつも通りに戻る。
「左様ですか....データベースを更新します............マキナの脳内の映像ファイルにかかっていたロックが解除されています、読み込みを開始してもよろしいでしょうか?」
おそらく。先ほどの映像データのことだろう
「構わねえよ」
しばらくの間、俺たちの息遣いとマキナの駆動音のみが空間を支配する。
「.....状況を把握いたしました。目標をデウス博士との接触から、エクスの打倒及び博士の研究資料の回収へと更新いたします。当面の行動方針に変更点はなし。.......皆様、大変失礼いたしました」
「......それは良いのだが、お前はもう良いのか?」
意外なことに義輝さんがそんなことを聞く。
「『良い』とは?マキナの機体に損傷はなく、これまでと同様のパフォーマンスを実現可能です」
しかし、マキナはいつも通りだ。
「たぶん、【剣豪】が言いてえのは、そうじゃねえな.....お前のメンタルは大丈夫なのかって話だ」
「.......マキナの思考回路に致命的な欠陥および損傷は認められません。自律思考機能もこれまで通り稼働可能です」
マキナはなおも機械的に応答する。
「「「「...........」」」」
俺たちの間に気まずい沈黙が流れる。
「ですが、少々.....思考回路に微細なノイズを感知いたしました.....ホワイト様、これはなんでしょうか?」
「ああ、それが『心』だ」
「これが『心』.....インプットいたします。...........皆さんご心配、心より感謝いたします。もうマキナは大丈夫です」
そのときのマキナの表情は、ほんの少し微笑んでいるように見えた。
「そうかい、ならいいんだ」
「......マキナ殿はお強いですね」
「じゃあ、行きましょうか!!」
「ああ、道を阻む者は全て私が斬り捨てる」
「はは、頼りになるねえ」
こうして、俺たちは最奥部へと進む。
そこに待ち受けるのは...........
三百話が見えてまいりました。




