第二百六十七話 挙動不審
そして、休息が明ける。この後は軽く朝食を取って出発するのが習慣化している。
朝食といっても干し肉だが。
「そういえば、マキナははかなり強いけど.....そんなマキナを最深部から追い出すなんて......一体何があったの?」
俺はここまで感じていたほのかな違和感について質問をする。
「...........【主人公】の言う通りだ。お前がこの迷宮の最深部へ戻ることに苦労するとは思えん」
「ご指摘の通り、マキナは戦闘も完璧にこなせるため、各階層を警備する機械人形に遅れをとることがございません」
「んで、その完璧なお前の身に何が起こったんだ?」
「その原因は、マキナと同型の自動人形である『エクス』の暴走にあります」
「エクス?」
「はい。エクスもデウス博士によって製作され、マキナと同様に迷宮の最奥部の番人を仰せつかっていた機体です。博士から命令を受けてから、八十年と三ヶ月、三日と七時間はなんの異常もなく命令を遂行していましたが、マキナがホワイト様と遭遇する三日と三時間と七分前にエクスが突然、理解不能な挙動を頻発するようになり、それが他の機体へ伝染し、マキナ以外の機体はマキナへ敵対するようになってしまいした」
「成程.....私はそういった分野に詳しくないのですが.....何十年も忠実に命令をこなす人形が突然挙動をおかしくするというのはよくあることなのでしょうか.....」
「.....考えにくいな。施設の警備なんていう単純なコマンドを数十年にわたって忠実に実行したプログラムが突然挙動を変えるだなんてのは、そもそもそういう風にプログラムするか、外部からの接触がなきゃ起こり得ないインシデントだ」
「......話は半分も分からんが、そのエクスとやらを斬れば良いのか?」
「エクスを.....破壊してしまうのでしょうか?」
マキナの発言を受けて、義輝さんは即座に言葉を言い換える。
「.................言葉の綾だ。一時的に無力化するだけだ......処遇はホワイトが判断する」
「あっ!...この野郎!俺に押し付けやがったな!」
「まあまあ、とりあえずは最深部へ向かいましょう。話はそれからです」
「【主人公】さんのおっしゃる通りです。まずは、そのエクスという人形の元まで辿り着かなければなりますまい」
「リイ様のおっしゃる通りです。引き続き、マキナが先導いたしますので」
「そうだな、とっとと行こうぜ」