第二百六十四話 ロボと将軍
マキナと【剣豪】の間には沈黙が流れる。
マキナは先ほどの会話を反芻しており、【剣豪】は己の刀の手入れをしている。
そんな沈黙を破ったのはマキナであった。
「義輝様.....『感情』とはなんなのでしょうか?」
「........知らん」
【剣豪】はぶっきらぼうに答える。
「では、義輝様はどういった時にどのような感情をもつのでしょうか?」
「.......強者と斬り結んでいる時、私は歓びを感じる」
「それは、もっとそれを続けたいということでしょうか?」
「.....そうだ」
「そういった『感情』とはどこから発生するのでしょうか?」
「............心だ」
「マキナにはそういった『心』といったものはあるでしょうか?」
「.......それはお前が決めることだ」
「マキナ、が....決めること?」
「.......私にはお前の腹の内などはわからん、他の連中とてそうであろう」
「では、マキナは客観的になんと定義できるのでしょうか?」
「......それもまたお前が決めるものだ。人でありたいのならば人と名乗れば良い、人形であると考えるならば人形でも良い」
「......わかりません、マキナには」
「ならばわかるまで考えれば良い、浮世などというものはそんなものだ。最初からわかっていることなどさほど多くはない」
「ありがとうございます....マキナは、考えてみます。マキナがなんなのか」
「.....そうか」
とだけ言うと、【剣豪】はマキナへと背を向け刀の手入れへと戻る。
そうして、次に現れたのはリイであった。
「足利殿、交代のお時間です」
「......うむ」