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第二百六十三話 ロボとオタク高校生

少し時間を飛ばして現在は、三十階層である。所々にネズミの死体や鉄屑が転がる迷宮を歩いて二日....休憩を挟んでいるとはいえ、疲労は溜まる。

「ふう.....結構歩きましたね」


「ええ、一度休息を取るべきと判断いたします」


「.......マキナ、私たちが迷宮へ侵入してからどれほどの時間が経った?」


「現在、迷宮攻略開始から三日と十二時間十七分が経過しています」


「ってことは、今頃外は深夜か」


「一回寝た方がいいですかね」


「だな」


俺たちはフロアにいる機械人形を殲滅を開始する。もう三回目ともなると馴れてきた。


「大気、凍れ」

ホワイトさんが魔術で動きを止めた機械人形をリイ、俺、義輝さん、マキナが殲滅する。もう半分ルーチンワークだ。

今回もマキナは大活躍だ。

「マキナは高性能なのです」

とのことだが、その戦闘力はロックやクリスに匹敵するレベルであろうに、「臆病者の石」は反応しない。体が機械だからだろうか。




そうして、殲滅を終えた俺たちは、次の階層への階段の近くに腰を下ろす。こんな密閉空間で焚き火を焚くわけにもいかないので、食事は干し肉だけだ。

「じゃあ、いまから八時間ほど休むとするか、マキナに加えて、一人二時間ずつ不寝番をしてもらう....ま、これまで通りだな」

こういう時、睡眠を必要としないマキナの存在はありがたい。ただ、俺たちも寝ているわけにはいかない。誰かしらは起きているべきだろう。

「んじゃ、まずは小僧からだ」


「わかりました、俺に任せてみなさん休んでいてください」


「あいよ」


「.....うむ」


「それではお先に失礼いたします」


そうして、皆は五分もしないうちに寝息を立て始める。どんな場所でもすぐに寝る。これが、獣狩りには必須のスキルだ。そうして、暗闇の中、マキナの左腕が電灯へと変形し、周囲を照らしている。............暇だ。

俺は退屈凌ぎのためにマキナへと話かける。

「ねえ、その腕....電気になったり、これまでの戦いではチェーンソーになったりしてたけど....他にも変形できるの?」


「はい、マキナはあらゆる状況に対応可能なのです」

そう言うと、マキナは右手をドリルや火炎放射器、銛などへと変形させてみせる。

「めっちゃすごい!」


「そうです、マキナは『めっちゃすごい』のです」

そうやって、無表情に誇るマキナの姿がどこかシュールで面白かった。

「ははは、マキナは面白いね」


「【主人公】様、『面白い』とは?」

いきなりそんなことを聞いてくる....やべ、どうやって答えよう。リイならいつもみたいに詩的な深いことを言うだろうし、ホワイトさんなら、科学的な知見を語ってくれるんだろうけど.....

「えっ!?....えっと、他人を楽しい気持ちにできる...とか?」


「では、【主人公】様は現在その『楽しい気持ち』なのでしょうか?」


「うん、俺は今マキナと話せて楽しいよ」


「では、その『楽しい』とは?」

うお、めっちゃ突っ込んでくる....なんて答えよう。


「ははは、なんて言うのかな.....うーーん、その時間をもっと続けたいって思うことじゃないかな?俺はリイさんたちや、恋人なんかの大切な人と一緒にいる時にそうやって思うんだ」

そんなことを考えながら、俺が思い浮かべるのはリイやホワイトさん、義輝さんの顔だ。

そうして、最後に思い浮かぶのはアンジーや黄金の矛のみんな顔だ。.....会いたいなあ。


「.....なるほど、マキナ感情を生成することはできませんが、『楽しい』という感情について理解することができました。データベースを更新します」


俺はそんなことを言うマキナを見て、一つの疑問が浮かぶ。

「でも、マキナは褒められると、さっきみたいに胸を張ったり誇らしそうな態度を見せるよね、それは感情じゃないの?」


「これは、デウス博士がマキナを誉めてくださった際の直前のマキナの行動から分析し、出力している行動です。

『感情』ではありません」


「.....褒めてほしいから、あんな感じの行動をするの?」


「おっしゃる通りです」


「じゃあさ、君はそのデウスって人に褒められたとき、なんて思ったの?」


マキナは澱みなく答える。

「もう一度褒めていただきたいと考えました」


......不思議な子だ。無機質な機械と会話をしているような気分にはならない。

「やっぱり...それは感情だよ。君はそのデウスって人に褒められたとき、その時間を『楽しい』って思ったんだ」


「そう、なのでしょうか?マキナは人形ですので人間の感情はわかりません.....ただ、褒められるためにそのような言動をとったことは間違いございません。.......マキナは壊れてしまったのでしょうか?」


その表情も声も無機質ではあるものの、その声色から、俺は「不安」という感情を確かに感じた。

「壊れてはないと思うけどなあ......」


「では、感情とはなんなのでしょうか?」


先ほどの質問には答えられないが、これには答えられる。

「......それはきっと、今君の中にあるものだ」


「マキナの....なか?」

そうしてマキナはしばらく考え込む。


そんなとき、現れたのは義輝さんだ

「..........おい、【主人公】、交代だ」


「あっ!もうそんな時間ですか、じゃあよろしくお願いします!マキナもおやすみ!」


「おすみなさいませ...【主人公】様」










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