第二百五十六話 クレイジー・パパのキッチン
今回の話ほとんど中身ないっす。
俺たちは一つ目の目的地であった宿場町へと到着する。サンバという小さな町だ。ここは、かつてクリスが買い出しのためによく訪れていた街だそうだ。
カクタスタウンのような、ザ・西部劇といった感じの街で、オタク心をくすぐられる。
「すご....まるで映画から抜き出したみたいだ.....」
「ああ!小僧の言う通りだ.....タランティーノのジャンゴを思い出すぜ」
「........じゃんご?誰かの人名でしょうか?」
「ああ!映画......演劇の作品の名前だ」
「ほう、それは興味深い....」
「して、ホワイト....宿はどこにとる?」
「ああ、そんならクリスが言ってたあそこの宿にする」
そういってホワイトさんは安宿を指差す。
「......わかった」
そうして、俺たちは宿へ荷物を置き、食事が取れる場所を探すべく、大通りをあるく。そんな時に目についたのは、一つの小さな店。
「腹減ったなあ.....何を食うかね...」
「......なんでも良い」
「はは!、ガキの頃、夕飯何食うか聞かれて、『なんでも良い』つったら、お袋に説教されたなあ...」
「俺もです....小さい頃に『それじゃ困る』って眉を顰められました」
「私もです。そういった日に限って、私の苦手な食事が出されるのです」
「そうそう!でも、なんでもいい、つった手前、文句は言えねんだよなあ」
「............小姓に悪いことを言ったな」
そういいながら、義輝さんは反省の色を見せる
そんなとき、乾いた風に乗って、エスニックな匂いがただよってくる
「なんか、いいにおいしません?スパイスみたいな.....」。
「ええ、あちらの店からのようです」
そうして、リイが指差した先には、木造の一軒家のような店が佇んでいる。
「へえ....『クレイジー・パパのキッチン』ねえ......いいじゃねえか、【剣豪】もそこでいいか?」
「......ああ」
そうして俺たちは中に入る、中に入り、匂いの元に辿り着いたことで、その正体を知る。
「Hey,bro!!!好きなとこに座ってネ!!!」
アフロにグラサンのおっさん店主の陽気な声が店内に響く。
「タコスですか!」
「へえ....この世界にもあんだな....タコス」
「その、タコスとはどう言った食べ物で?」
「たしか、トウモロコシで作った生地でスパイシーな肉と野菜を包んで食べる料理ですね....」
「トウモロコシですか!!」
「そういえば、リイさんはトウモロコシ好きでしたよね」
「肉、か.......」
義輝さんは苦虫を噛み潰したような顔になる。
「『なんでも良い』なんて言うからだな.....店、変えるか?」
そういえば、江戸時代以前の人って肉食わないんだったな。
「俺は構いませんよ」
「私もちょうど、米を食したい気分ですので...」
「......いや、良い。武士は一度言ったことを曲げぬ」
「へえ...大したもんだ.....んじゃ、テキトーに注文していいか?」
そうして、俺たちの了承を得たホワイトさんは、「おすすめ四つ」というあまりにも大雑把な注文をする。
そうして、陽気でアフロヘアの店主が持ってきたのは、ハードシェルタイプのタコスだ。
「お待たせぇ!!当店イチオシの『マッドタコス』だよ〜!!」
俺たちはそれを頬張る。
直後口に広がるのは、刺激的なスパイスの香りと肉の味。
濃い味と油の風味で脳が幸せに麻痺していくのを感じる。
「うまっ!!」
「こりゃうめえな.....研究室によくデリバリーしたんだよなあ...タコス....懐かしいな」
「これは!辛味と野菜がよく絡み合っています、こういった大味な食事もすばらしい....」
義輝さんはしばし、タコスと睨み合った後、意を決してそれを頬張る。
「..........なんだ、美味いではないか」
「お!肉食えるようになったのか..!!あれだな、ジャンクフードの前じゃあ、仏様も無力ってこったな」
「........食えぬわけではない」
「はっ!これで、わざわざ干し魚を探さずに済むぜ」
そんなこんなで食事を済ませ、会計を済ませると言う場面になって事件は起こる。普段、パーティの金は四等分し、宿代などは各自で払うスタイルをとっている。当然食事代も割り勘だ。しかし、今回は
「ここは、俺に払わせろ」
ホワイトさんがそう言って聞かない。まあ、そんな高額でもないし、今度は俺が払えばいいやくらいの感じで受け入れる。
「では、お言葉に甘えさせてもらいます」
「私もそうさせていただきます、しかし....次回は私がお支払いいたします」
「.ホワイト、何を企んでいる.......まあ、良いか」
「ははは、ただの善意だぜ?」
そう言ってホワイトさんはウインクしてみせる。
............ほんとかなぁ
急ですが、「第百六十九話 蠍座の月」も加筆修正しました。スコーピオの独白を追加しました。新規の情報はありませんが、お時間があればぜひご一読ください。




