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第二百五十四話 築いたもの、守ったもの

アンジー視点っすね

【主人公】さんが消えた。


私は全身の力が抜けて立っていられない。世界がぐるぐる回転し、ボヤけていくように感じる。涙が出口を求めて、瞳から溢れ出す。


ゴルドさんは自分を責めるようにブツブツとうわ言を呟いている。


メルトさんは必死に周囲を解析するも何もわからない。


ハンゾーさんはただ黙っている。


私たちは、その事実を受け入れられずにいた。


その時、私たちはどんな会話を交わしたか覚えていない。


あの後、どうやって宿まで帰ったか覚えていない。


ただ、わたしたちの活躍を讃える歓声が耳障りだったのは覚えている。


.......うるさい、何も知らないくせに


何もわからなかった。なぜあんなことになったのか、なぜ彼だけなのか、

一つだけはっきりしているのは、つい数時間前まで、私の腕の中ではにかんで笑って見せた彼の笑顔を見ることはもうできないということだ。




私たちを宿の主人であるダンゾウさんが出迎える。


「皆様、おつかれさまでございま、す.......【主人公】様はどうなさいましたか?」


ゴルドさんが苦い表情して答える。


「彼は.....死んだよ」


「.............左様ですか、心よりお悔やみ申し上げます」


「............ああ」


そうして私たちは無言のまま、食堂へ向かう。ここまで半日近く何も食べていない。


心とは裏腹、体は空腹を訴える.....こんなときくらい、とは思ったものの、ハンゾーさんに言われて食卓へつく。

「僕のせいだ....僕が魔石に触らなければ...!!!」


「ゴルド.....あれは事故よ、誰も悪くない...いいえ、トラップに気づけなかった私の責任よ」


「其れも違うなメルト....危機察知は俺の仕事だ」


「うぅぅ..【主人公】さん.....私がもっと強ければ....私があの時代わりに死んでいれば........!!!!」


私たちは皆、涙を流し、自分を責める。


そんなときであった、宿の関係者らしき老人が私たちへと話しかける。

「失礼致します。私、この宿の創設者、ノキザルの子孫であるウエスギと申します。『黄金の矛』の皆様に書簡を預かっております」

そう言うと彼は、古びた木箱を差し出す。

「あの、あとにしてもらってもいいですか?」

自分でも驚くほど冷たい声が出る。

「失礼を承知で申し上げますが、我が祖先がとある方から預かったものでして.....」


「.......俺が読む」

そうハンゾーさんは言い、手紙を読み始める。


「......なっ!!!!」

直後ハンゾーさんが声をあげ、私に強引に手紙を押し付けてくる。


「こ、これは........!!!」

そこにあったのは世界で一番愛しい彼の名前、そしてその内容を見て私もまた思わず声を上げる。


「【主人公】さん!!!!!」


その叫び声に近い私の声を聞いたメルトさんやゴルドさんも手紙を見る。

「はっはっはっ!!!!【主人公】くんは....いったいどうなっているんだ!!」


「『三百年前にいます』って、あの子ったら、そんな大事なことをサラッと流して....」


「......手紙を読む限り、元気にやっているようだ」


「よかった!!!よかった!!、生きてるんですね【主人公】さん!!!!」


メルトさんはそこで思い出したように口を開く。

「ここに書いてある、『時の旅路』って叙事詩....たしか、黒髪の少年と虎の獣人の物語のはずよ....あの子ったら、叙事詩の主人公になっていただなんて」


「........俺も『荒野の聖人』という叙事詩に、虎の獣人と黒髪の青年が登場したと記憶している」


「僕も聞いたことがある!!『アルトーレ四英雄』という叙事詩.....彼らのことだったのか....!!」

私も一つ思い出したことがある.....帝都にある冒険者ギルドの本部、そのロック・ダイアモンドの像の横....そこに並べられた、二つの銅像を思い出す。


「すごいです......」


そうして、今度はわたしたち個人に宛てられた部分に目をやる。

「もう...『世界の誰よりも愛しています』だなんて....手紙じゃなくて、あなたの口から聞きたかったです....」


「......ははは、【主人公】くん.....君は僕なんかよりも、ずっと優しいよ...」


「ええ、今度あったら、じっくり問い詰めてあ・げ・る」


「........ああ、俺のつまらない話で良いならば、いくらでも話してやるさ」


そうしてゴルドさんが号令を下す

「僕たちもこうしちゃいられない!!彼の足跡を辿って、彼を...僕たちの仲間を、この世界に連れ戻す手がかりを探すんだ!!!」


「はい!!!!」


「ええ、必ずあの子を連れ戻しましょ」


「.....ああ」


待っててください、私の王子様......今度は私があなたを助けてあげる番です!!!!!




.......ただ、手紙にあった「コゼット」と「ルーナ」という名前。


彼が帰ってきたら、じっくりお話を聞かなければ........


他の女のことなんて、考えられなくなるくらい、搾ってあげますから♡

今日は話の区切りの都合で一話のみ更新です

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