第二百四十八話 皺だらけのラブレター
クリスから手渡された皺だらけの地図を皆で囲む。その地図には、「蝿の王」が普段根城にしている、もともと商人が使っていたという大きな屋敷に印がつけられており、そこまでの侵入経路が事細かに分析されてる。
彼は決して腐ってなどいなかったんだ、この街が腐っていくのに必死に抗っていたんだ。愛する人を救うために。
俺は呟く。
「クリスさんはたった一人で戦っていたんです、これはその闘いの記憶だ」
「であれば、この街の住民と同じように、彼の心も解き放って差し上げましょう.....この呪われた鳥籠から」
「.........あの男もまた、武士であったということか」
「なるほど、ね......って、おい、見ろよあれ」
ホワイトさんが指差す先の空には、早朝にもかかわらず真っ赤な月が昇っている。
「.....みなさん、行きましょう」
「オーケー、露払いは俺に任せな」
「......死体の一段が接近してきます、数は二十ほどです」
「...........斬る、それだけだ」
目の前には死体の大群、ただ、先日のように情けない声はあげない。
クリスは一人でこいつらと戦い抜いたんだ、俺たち四人にできない道理はない。
俺たちは、死体を蹴散らしながら、「蝿の王」が待ち受ける、腐った玉座を目指す