表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

263/378

第二百四十七話 恋バナ

一階へ降りるとそこには、着飾ったメリーとニコニコしたクリスが座っていた。メリーは椅子に縛り付けられている。

それを見た俺は声をあげそうになるが必死に堪える。

「さあ、どうぞ」

机の上には、チーズや肉料理、乾燥フルーツにサボテンの酒などが並んでいる。

「へえ...食料を要求した割に随分豪勢だな」


「ええ、私といたしましてもこうして、誰かと食卓を囲むのは数年ぶりですので」

そうして、しばらくは他愛ない雑談が続く。たとえば、俺たちがクローバーの街を目指していることや、クリスの日常についてなどだ。リイさんは静かに耳を澄ませ周囲を警戒している。会話は主にホワイトさんとクリスとの間で繰り広げられる

「てかよお...あんた、使徒教徒だろ?酒飲んでいいのか?」


「ええ、神はこのような廃墟に住む男を気にかけるほど暇ではない...そう考えております」


「.......一向宗の生臭坊主のようだ」


「そのイッコウシュウという宗教は存じ上げませんが.....そちらの教徒の方々も私も結局はただの人間ですので、節制し続けることなど不可能なのです」


「なるほどね.....」

そうすると、ホワイトさんと目が合う、合図だ。俺は本題を切り出す。

「....クリスさん、俺たちは明朝、この街の支配者へ戦いを挑み街を解放します。ホワイトさんの見立てによれば、そいつを倒せば死体たちも活動を停止するそうです。協力していただけませんか?」


「........活動を停止するというのは、生き返るということですか?」

クリスはしばらく考え絞り出すように声を出す。

「ちげーな、この魔術が感染するトリガーはあくまで対象の死亡だろう、術がとければ死体に戻るだけだ」


「......であれば、協力は致しません」


「な、なぜ!!」


「そもそも、勝てるかもわからない戦いに身を投じるのはごめんです。ここでの生活は安定しつつあるのです。」


「..............そうか、であれば私たちだけでその『蝿の王』とやらを殺す」


「そうですか.....であれば、それまではここをご自由にお使いください。ただ、敗北した場合、ここに逃げ込むのはご遠慮ください。また、私もこの件に関しては一切お助けいたしません」


「へいへい、んじゃ、まあ、ごちそうさん」


「お食事の提供、心より感謝いたします」


「..........ではな」

そうして、三人は部屋へと戻っていく。俺は一人残り、クリスと話してみることにする。

「......クリスさん、メリーさんのこと愛してらっしゃるんですね」


「.....!!、まさか...ただの性欲処理のための道具にすぎません」


「でも、あなたの腕...傷だらけです。彼女のお手入れを手伝う際についた傷ですよね?性欲処理の道具ならば、そこまでして彼女に固執しなくても、娼婦を買えばよろしいのでは?」


「ははは、先ほども申し上げた通り、私はこの街から出られないのですよ?」


「失礼を承知であなたの部屋を覗いてしまいました、部屋には化粧品や香水の空き瓶がたくさん転がっていました.....それも全て同じ銘柄.....この街にあるもの全てをかき集めたとしても、到底足りない量では?」


「.......だから、なんだというのです?私に協力しろと?」


「違います、ただ....ちょっと恋バナをしませんか?」


「は!?、恋バナ?」


「俺も、遠い故郷に恋人がいるんです。あの人たちは恋人がいらっしゃらないので、あまりこう言った話ができないんですよ」

クリスは暫し沈黙したのち、高笑いする。

「..............はっはっはっ!!よろしい!、まずは、あなたの恋人との馴れ初めからお聞かせいただいても?」


「ええ、俺の恋人....アンジーっていうんですけど...」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「勘違いで泣かせてしまったのですか!!私にも似たような経験があります...」


「そうなんですか!....それにしても、クリスさん勇気あるなあ...自分から告白するなんて」


「ええ、彼女を他の誰にも取られたくないと思いまして...まさに一世一代の大勝負でした」


「俺なんて、彼女の方から言わせてしまって、情けない男ですよね」


「そんなことはないはずだ、遠く離れても恋人を一途に想うというのは、案外誰にでも出来るというものではないことなのです。....悪いことは申し上げませんので、早く帰って顔を見せて差し上げてください、互いが生きている内に」


「.......ええ、そうします」



「おーい、小僧。そろそろいくぞー!」


「おはようございます、【主人公】さん」


「........夜更かしか、感心しないな」

ホワイトさん達がそんなことを言いながら、階段を降りてきたところで、クリスと夜通し話していたことに気がつく。

「あ!、クリスさん...俺そろそろいかなきゃ!!」


「.......左様ですか、楽しませていただきました」


そうして、俺たちは扉を開け、外へ出ようとする。


「じゃあ!ありがとうございました!」


そんなとき、クリスさんの声が聞こえる。

「お待ちを!!」


「どうしました?」


「そこのテーブルの上にこの街の地図がございます、お使いください」


「......!!、ありがとうございます」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ