第二百四十六話 性善説
トイレから戻った俺は先ほど見た光景を、皆に共有する。
「....なるほどねえ、たしかに、見ず知らずの俺たちのためにあそこで割って入れるような奴が、その気になれば逃げ出すなんて造作ないはずだ」
「.......では、なぜこの地に留まる」
「足利殿のおっしゃる通りです、彼が動く死体を慰み者にしているということも信じ難い話です」
「とりあえず、普通に聞いてみませんか?」
「素直に話すとは思えねえけどな....」
「俺は答えてくれると思います.....確信はないんですけど、クリスさん...メリーっていう人を愛しているように見えました。なら、この街を...自分の恋人をこんな風にした奴を許せるわけがない」
「....愛は人を変えてしまいます、しかし、悪魔となるか勇者となるかはその人間次第....彼の善性にかけてみるというのも悪い判断ではないかと」
「はあ、そこまで言うならそれでいこう」
「..........そもそも、あの男の助力などなくとも私たち四人で戦えば負けることなどない」
「『私たち四人』ね.....へえ、お前がな....」
ホワイトさんはニヤニヤし出す。
「..........お前は一人で戦え」
「おい!そりゃねえだろ!!」
そうして、笑いが起きる。
すると、一回から俺たちを呼ぶ声が聞こえる。どうやら、夕食の支度ができたそうだ。