第二百四十三話 下衆な男
ブクマ感謝!!
俺たちは声のした方へ駆ける。そうして、一軒の廃屋へと逃げ込み扉を閉める。
そこにいたのは、二十代後半ほどの糸目の優男風の男。プラチナブロンドの三つ編みの長髪が特徴的な男だ、彼が着込む鎧には「使徒教」のシンボルである太陽の紋章があしらわれている。
俺の胸の魔石が微かに輝く。
「旅のお方.....ご無事でよかった」
「ありがとうございます.....ところであなたは?」
「ああ、私はクリス・ハートと申します。見ての通りこの街最後の住人です。そして、こちらは私のペット.....失礼、同居人のメリー.....さあ、メリー、ご挨拶を」
「guaaaaaa!!」
そこにいたのは、鎖に繋がれ、猿轡を噛まされた、先ほどと同様の動く死体であった。足の腱には動けないように細工をした跡がある。
それをみた俺たちは絶句する。
「ひっ!!」
「おいおい、マジかよ」
「死者をまるで飼い犬のように.......」
「..........貴様、悪魔の手の者か」
そう言いながら義輝さんは刀に手をかける。
「ははは、ご冗談を....私はれっきとした使徒教徒ですよ....どちらかといえば女神様の使徒です」
「じゃあ、なんで、女の死体を飼ってやがんだ」
「ははは、このような街に暮らしていては溜まってしまいますので」
「「「「ッ!!!」」」」
こいつ、イカれているのか?
俺は恐怖を抑えながら口を開く。
「と、とりあえず、この街で何が起こっているのか教えてもらっていいですか?」
「ええ、かまいませんよ」
そうして、彼の口から語られたのは、この世界で容易に起きる「悲劇」の話であった。
かつて、カクタスタウンと呼ばれたこの街は、元々は宿場町として栄え、サボテンを用いた酒の醸造で有名な街であった。しかし、五年ほど前、とある魔物によって襲撃されたこの街は一夜にして壊滅してしまったそうだ。
その魔物は、自らの手で殺した生き物の死体をゾンビのようにするという能力を持っており、その能力によってゾンビになった死体も同様の能力を得る。その繰り返しによって、この街の住人は皆、動く死体となった。この街にたまたま滞在していた彼は、持ち前の戦闘能力と、使徒教徒に伝わり、この街の死体などの死者に有効な「聖属性魔術」によって、生き残ったものの溢れ出る死体の数の暴力には敵わず、この家にとどまっているそうだ。
「な、なるほど....」
「ええ、その魔物と戦うにしろ、この街を出るにしろ、準備や話し合いの時間が必要でしょう。この家の2階の部屋をお貸ししますのでお使いください。.......ただ、食糧を提供していただければのお話ですが」
「ええ、わかりました。ホワイトさん...俺が持ってる干し肉を渡します。それでかまいませんか?」
「ああ、くれてやれ.....いや、まて、使徒教徒って肉食わねえんじゃねえか?」
「いえ、ご心配なく。神はこのような街を見ていらっしゃるわけございません。それに肉は私もメリーも好物なのです」
そう言うと、クリスはメリーの頭を撫でる。
「それでは、私どもはこれで.....お手洗いは、そちらを進んだ先にございますので、ご自由に」
そうして、彼はメリー連れて奥の部屋へと入ってゆく。
「ど、どうも」
「......私たちも行きましょうか」
「........うむ」
そうして、俺たちは軋む階段を登る。
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