第二百四十一話 神の棄てた街 前編
アルトーレを出た俺たちは歩いていた。アルトーレから歩いて三日ほどのところにある、宿場町がひとまずの目的地だ。
路銀はたくさんあるものの、今後、路銀稼ぎに時間を割かずに済むように節約しようと言うホワイトさんの提案だ。
それに、休息で立ち寄った街では慰労の意味を込めて贅沢な食事をするという方針もある。
そうして、歩いているわけだ。俺たちの旅の目標は帝国の支配領域である「ソラリス大陸」の最南端にある港から船に乗り、「フィーデス大陸」へと至り、未開の地である「バーバル」を抜け、その先にある宗教国家「アポステル」にある「クローバーの街」を目指すと言う壮大なものだ。まずは、一ヶ月ほどかけて南端の町「エスポワル」を目指す。
とりあえずは、最寄りの宿場町を目指すと言うわけなのだが........
「霧、濃くないですか?」
そう言う俺は脳裏のかつての強敵の姿が明滅し警戒心を高める。
「..........【主人公】の言う通りだな、ホワイト、魔術的な攻撃か?」
「いーや、ただの自然現象だ.....」
ホワイトさんは魔眼で周囲を観測しながら答える。
「問題ございません、以前とは異なり五感は正常ですので」
「リイの旦那もそう言ってるしよお...あんまり続くようなら、俺の魔術で散らしてやるから安心しろよ」
「なら、大丈夫です。変なこと言ってごめんなさい」
「いいってことよ、警戒すんのに越したことはねえからな」
そうしてまた、次の街で何を食うかや、何か名所はあるのかなどの他愛のない雑談へと移る。
そんななか、リイの耳がぴくりと動く。
「.........!!、皆さん....一雨くるようです」
「........夕立か」
その直後、ザーー!!、という音と共に、雨が降り出す。雨粒もかなり大きく、勢いもすごい。
「うわっ!結構ひどいですよ!」
「ゲリラ豪雨か...落雷の危険もある。.....ったくよお、」
そう言うとホワイトさんは地図を広げる。
「っし、こっから南西の方向1km地点に小さな町がある。進行方向からは外れちまうが....そこで雨宿りするぞ」
「承知」
そうして、俺たちは雨の中を全力疾走で駆け抜ける。........雨の中ダッシュするなんて小学生の時以来だな。
霧をホワイトさんの魔術で散らしながら、街へとたどりつく。
しかし、たどり着いた街は廃墟そのものであった