第二百二十三話 ホワイト教授の魔術教室 中編
俺たちはなおも森を進む。俺は今回の本来の目的について、ホワイトさんへ質問する。
「あの、ホワイトさん....今回はあなたのギフトについて教えてくださると言うことででしたが....それについてはいつ説明を?」
「ああ、そんなこともあったな....よし!いいぜ....ただ、そのまえにお前らに『授業』をしてやる。俺のギフトを理解するために必要な最低限の知識を教えてやる。【剣豪】もしっかり聞いとけよ、なにがお前のギフトかわからない以上、知れることは知っとけ」
「.....わかった」
「じゃあ、まず...『魔術とはなんなのか』についてだ。結論から言うと、わかんねえ。」
俺たちは肩透かしを喰らい、ずっこける。しかし、彼は続ける。
「ただ、現象の分析はできる。魔術とは大気中に満ちる魔力が引き起こした科学現象だ。この世界の魔術師連中はそれを神や精霊の奇跡と捉え、行使できると思ってやがるが、俺からしちゃ二流だ。もちろん、そういった神や精霊が無関係とは言わねえがな....んで、この魔力っつうのは万能の元素だ。当然だろ?それを燃料にすりゃ、火が出たり、水が出たり、人間の身体能力を向上させたり、人一人を三百年も前に転移させたり、な。これを何か特定の物質とむすびつけるなんざ無謀もいいとこだ....ここまでが魔術に対する俺の見解という名の真実だ。そんで、今、お前ら『なんで、こいつはこの世界に来て二年やそこらなのにそんなことわかるんだ』って思ったろ。.....それこそが俺のギフトだ。
俺のギフトは『魔眼』。俺の瞳に映る魔術的な現象を構成する魔力を可視化する...という能力だ。この能力で観測した魔力の運動データの傾向とあわせて、俺は目の前で発生してる魔術の効果について、ある程度解析することが可能だ」
そう言うと彼は、両目を大きく見開いてみせる。よく見るとそれぞれ目の色が違う。右目が青で左目が薄い緑。
彼が以前語った彼のルーツから予想するにならば、左目の瞳が魔眼なのだろう。
彼の魔術への異常に深い見識、そして、「千年伝説」のなかで猿の魔術をすぐに看破できたのは、この魔眼によるものだったのか.......
「な、なるほど......」
リイさんもまた、「なるほど」と、呟き顎に手を当てて思案する。
義輝さんは興味なさそうに、周囲を警戒している。それほど、詳しい能力などわからなくとも、信頼しているということなのか。
「って感じだな、小僧の『反射』やリイの旦那の『鋼質化』とは違って派手さはねえがな.....おっと、早速、ちょうどいい実験対象のお出ましだぜ」
そうして、俺たちの目の前に現れたのは、盾獣の群れであった。