表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

238/372

第二百二十二話 ホワイト教授の魔術教室 前編

翌日、俺たちは、アルトーレから五時間ほど歩いた先にある森を訪れた。途中、近くに別の森があったがそれをスルーしたことには疑問を覚えたが、黙ってついていく。

俺たちがたどり着いた森は、通称「太古の森」と称されており、この森はブルーバード家の厳格な管理や保護によって、いまだに原生林が残り、何千万年も昔の獣や植生が残る地域として有名だ.....とホワイトさんが言っていた。

確かに言われてみれば、心なしか昆虫やと爬虫類のサイズが大きい。

「おおお!!この花....この時代の近縁種の形状とは大きく異なっている....この、昆虫...地球の白亜紀に生息したものとよく似た捕食器官を所持しているな....」

などと、五分おきに立ち止まってはしゃがみ込み、何やらぶつぶつと呟いている。

「これは....ホワイト殿は随分研究熱心な方なようだ....こちらもなにか『悪魔』の正体に関係がおありなのでしょうか?」

生真面目なリイはそんな疑問を口にする。それへと答えるのは義輝さんだ。

「.........おそらく違うな。ただの奴の道楽だ」


「ははは...ユニークな方ですね」


「【主人公】......奴に気を遣わなくて良い..つけ上がるだけだ.......おい!ホワイト、先へ進むぞ」


「待てって....これほどまでに太古の生態系が現存している地域なんざ......いや、俺が悪かった、行くか」

義輝さんの威圧に押されたのか、ホワイトさんは先へ進む。

「そういえば、ホワイトさん....今回戦う獣は?」


「ああ!よくぞ聞いたな!!小僧!今回戦う獣はズバリ『盾獣』!四足歩行の角竜によく似た連中さ、噛み砕いて言やあ、トリケラトプスだ」


「トリケラトプス!!マジでいるんですか!!」


「おうよ、恐竜っつうのはやっぱ男のロマンだな!」


「.....ただの蜥蜴であろう、わからんな」


「かぁーー!!【剣豪】わかってねえなあ!!恐竜と聞いて興奮しない男はいねえぞ!!なあ!リイの旦那!」


「たしかに、ホワイト殿のおっしゃる通り、はるか昔....人の営みすらも存在しなかった頃の生き物と聞けば、少々興味を駆り立てられます」


「だよなあ!さっすが、わかってらっしゃる。まさに、『国破れて山河あり』ってことだ」

漢詩を引用するホワイトさんにリイは感心といった様子で眼を細める。



ただ、俺は、彼の異常なテンションやここまでの話を聞いて、彼がアルトーレ付近の普通の森でなく、この原生林を選んだ理由を直感した。この人、恐竜が見たかっただけでは?、と。

義輝さんもそのことに思い至ったのだろう、ホワイトさんを問い詰める。

「......ホワイト、お前....まさか、この森の動植物を見物するためだけに、態々このような遠方まで足を運んだのか?」


「おうよ、悪いか?」


「........はあ」

義輝さんはため息をつく。いつものことなんだろう。まあ、俺としては恐竜が見れるというのはかなり魅力的に感じるため、どちらでもいいのだが。ただ、ここまでずっと思っていた一つの疑問を口にする。

「ところで、ホワイトさん.....さきほどこの森は()()()()()()()()()()()()()()()()()と、言ってましたけど.....勝手に入って大丈夫なんですか?」

ホワイトさんは明後日の方向をみながら、かろうじて同意の声を出す。

「......................おうよ」

おい、まじかよ、あんた。ホワイトはダラダラと冷や汗をかきながらもサムズアップしてみせる。

それを見て、リイは吹き出す

「はっはっは!!愉快な方だ!」



「............ホワイト、謀ったな?」

義輝さんは呆れた顔をする。ホワイトさんは開き直って声を張る。

「ただよお!入っちまったもんはしょうがねえ!!このまま前進あるのみだ」


「「「.......」」」

なんとなく、ホワイトさんがどういう人かわかってきた気がする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ