第二百十九話 カフェ「グレープレイク」
「って感じでよ、俺も三年ほど前にこの世界に流れ着いたってわけよ」
そう笑い飛ばすホワイトの顔にはどこか、悲哀が見え隠れしていた。
「.....ホワイトさんは、あの『悪魔』に夢を奪われてしまったんですね」
そう言いながら、俺は拳を握りしめる。今日出会ったばかりの他人のことであるのに、彼の受けた理不尽に俺の心は沸騰していく。
「ま、俺としちゃ、この世界で魔術師としての探究の日々には満足してっからな....ぶっちゃけ、どーでもいい」
そうして、リイが口を開く。
「これで、私たち四人が『悪魔』に運命を狂わされた同胞であるということがわかりました。さて、この後はどうなさいますか?私といたしましては、穏便に解決したいと考えておりますが」
そう言うリイの瞳は足利義輝を捉えている。
「.......さきほどの乱入で興が削がれた。ただ、斬り合うと言うのなら、それもやぶさかではない」
「俺はリイさんに賛成です。ここで殺し合っても、いいことなんてないですから」
「俺も同感だな、まあ、いっちょここまでの武勇伝自慢大会といこーや」
「..........であれば、注文をした方が良いのではないか?」
「あしか、がさん?の言う通りですね」
「.......【主人公】といったな」
「は、はい!!」
「....義輝で良い」
「はいっ!義輝さん!!」
「......無骨な方と聞き及んでおりましたが、こういった一面も持ってらっしゃるのですね」
「はっ!【剣豪】の野郎!自分のファンがいるのがそんなに嬉しいか!!」
「..........黙れ」
リイさんは怖いもの知らずすぎるでしょ.....。それにしても、ホワイトと義輝さんはあの感じ、合わないようで結構仲良いんだな。
「と、とりあえず注文しましょう」
「で、小僧....お前がこの店を提案したわけだが.....おすすめはあんのか?」
「はい!たしか、葡萄タルトが有名らしいです......皆さんそれで構いませんか?」
「ええ」
「.......うむ」
「おうよ」
「すいませーん!!」
俺の呼びかけに応えて、店長がすっ飛んでくる。ウエイターは厨房の入り口で固まってる......そんな、ビビらなくてもいいのに。
「えっと、葡萄タルト4つと、飲み物は...」
「私は、このハーブティーをいただきます」
「............私はこの紅茶を、無糖で」
「俺はブラックコーヒー」
「えっと....あとは、コーヒーをミルク付きで」
「ごごご、ご注文を繰り返します!葡萄タルト4つとそれぞれお飲み物が..ハーブティー、無糖の紅茶、ブラックコーヒーとミルク付きコーヒー......以上でございますか?」
声が裏返ってる.......ほんと、ごめんなさい
「ええ、それでよろしくおねがいします」