第二十話 最後にもう一波乱 前編
前半は【主人公】くん、後半はアンジーちゃん視点です。
森を抜け、山道を登り、山頂を目指す。数十分かけて先ほど俺が突き落とされた地点まで戻ってきた。そこには、アンジーたちと戦ったであろうワイバーンたちの死体があった。
「まだ、死体が暖かい。そこまで、遠くへは行っていないようだ。」
山道を進む。アンジーたちは無事だろうか、まあ俺でも勝てるような相手に彼らが負ける道理はない。
「....?」
何か騒がしい。山頂へと近づくにつれてその音が大きくなってくる。
「まさかっ!!」
嫌な予感がした俺は進むペースを上げる。
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ワイバーンを退けた私たちはハンゾーさんの先導で山頂へ辿り着いた。そこには、他とは明らかに異様な怪物がまるで私たちが来ることがわかっていたかのように鎮座していた。そいつは他の個体よりも二回りほど大きく、硬質な鱗がまるで鎧のようにやつの体を覆っていた。
「皆、気をつけてくれ。あいつはやばいぞ」
そう言うゴルドさんはうっすら冷や汗をかいている。
「あいつはアーマード・ワイバーンよ。あいつの外皮は鉄よりも硬いわよ。」
アーマード・ワイバーンの圧倒的存在感にメルトさんの話もあまり入ってこない
「.....逃げるか?どうするゴルド」
「いや、ハンゾー戦うべきだ。背後を突かれたらたまらないし、何よりここで【主人公】と奴が鉢合わせするのはまずい」
「そうですね。戦いましょう。」
【主人公】さんを傷つける奴を私は許さない。
アーマード・ワイバーンは予想外に強力だった。甲冑のような外皮は生半可な攻撃を通さない上に、奴が吐くブレスは他のワイバーンのそれとは比較にならないほど高温だ。尾や爪、牙による攻撃もバカにはできない。ゴルドさんはすでにかなり疲労しているし。私たちもかなり限界に近い。このまま戦闘が長引けば誰かが倒れる。それを皮切りにパーティーは崩壊して逃走する羽目になる。そしてその過程で誰かしらが死ぬだろう。ただ、今の私にできることはやつに隙が生まれるのを待ち続けるだけだ。ただ、それも長くは続かない。それを私が思い知るのはもう少し後の話だ。