第二百九話 レストラン「フィッシャーマン」
未来人の青年と獣人の詩人が、この街のレストランで食事をとる数時間前.....
とある魔術師と剣士は、朝食を取るため、街の船渡しから教わったアルトーレ最高のレストラン「フィッシャーマン」を訪れていた。ガラスの窓に面した室内の席で注文を終えた二人は今後の予定について話し合う。
「.....して、ホワイト...悪魔を討つといってもなんの手がかりもないではないか....」
「たしかに、俺たちだけじゃ難しいだろう....だから、巨人の肩を借りるんだ」
「.......巨人?」
「ああ、過去の知識人たちの記録を漁るんだ。俺たちのような転移者やギフト持ちの逸話があるかもしれねえ」
「なるほどな......あてはあるのか?」
「ああ、ここから、南下して、カハートやこれまで通った街すらも超えて海をわたる。そうして、南国の部族がひしめく未開エリアを抜けた先にある。『クローバーの街』にある図書館を目指す」
「かなり遠いな......」
「ああ、移動だけで三、四ヶ月は見といた方がいいな。しかし、行く価値はあるぜ!なんたって蔵書数は驚異の五千万!!そんだけありゃ、なにかしらの尻尾は掴めるだろう。まあ、全部は見切れねえにしても、そこでまた、二、三ヶ月かかるがな」
「なるほどな、それに関しては任せて良いか?」
「ああ、まかせろ。俺が悪魔野郎をお前の目の前に引き摺り出してやる」
「......頼もしいな」
「そりゃどーも.......お!飯が来たようだな」
「.......こりゃうめえな」
「ああ、特にこのタレとの絡み合いが絶妙だ.....比翼連理とでも言うのだろうか」
「はは、お前らしくもない、食いもんの味を恋人に例えるなんざ、ロマンチックなことを言うじゃねえか.....ただ、同感だな。見た目はイギリスのフィッシュ&チップスそっくりだが、天と地の差だな」
「それはなんだ?」
「フィッシュ&チップスってのはイギリス.....アーサーやマーリンの故郷の地の郷土料理でな」
「......なるほど、これほどまでに美味なものがあるのなら、奴らが故郷へ恋焦がれる気持ちも理解できる」
「はは、なんだそりゃ」
「.......ただ、しばらくはこの美しい街を堪能しようではないか」
「ああ、結構、観光名所もあるみてえだしな」
彼らはまだ知らない、運命の交錯に
しかし、この先、待ち受ける闘いに備え、牙を研ぐ
私はかつて原宿で食べたフィッシュ&チップスの味が忘れられません