第二百三話 時代の夜明け
.............................どれほど、待ったところで。何も起きない。俺は恐る恐る目を開ける。そこは眩く光る洞窟であり、そこにいるのは、傲慢な魔術師と俺の友人。
「...........はっっっず!!!!」
「ははは、貴方らしい」
「黒髪、獣人...一体どういうことだ?」
「いや、なんでもない」
何となく予想はしてたんだけどなあ、流石にちょっと期待してしまった。はあ....、ただ、これはこれでホッとしている俺もいる。まだ、リイと一緒にいられることに安心している自分がいる
「はあ....やっぱり帰れないか....」
「貴方には悪いのですが、私は少々安堵してしまいました」
「........実は俺もです」
ははは、と再度笑い合う。そんな俺たちに再度ロックは口を開く。
「.....まあ、なんだ、なにごともなくてよかったじゃないか」
「ああ」
「ええ」
そうして、俺たちは帰路に着く。無駄に長い帰り道の中、誰からともなく雑談が始まる。そうして、話は俺が未来から来たということやこれまでの冒険譚、街の獣狩りの悪口など、多岐に渡った。とくに、俺が未来人であるということを知った時、ロックは腰を抜かして驚いていた。
そうして、話題はロックの過去の話へと移り変わる。
「....それにしても、ロックはなんで、獣狩りなんか?」
「ああ、それはね.....」
「........なるほど、ご家族の中を取り持つために」
「最初はちょっと嫌なやつだと思ったけど....意外と、真面目というか、優しいというか...」
「ただね、最近思うことがあるんだ」
「なにを?」
「この世界は、獣狩りについて厳しすぎるとね.....」
そうして、ロックはこの世界の人間の獣狩りに対する態度やシステムへの不満について語り始める。
「だから、僕は.... 今回の冒険で得た金で、そう言った問題を解決する組織をつくろうと思うんだ名前は、そうだね....『ギルド』なんてどうかな?ついでに、『獣狩り』なんていう下賤な名前も改めよう...『冒険者』....いい響きじゃないか!!!」
そこで、俺はこの世界に来てまも無い頃に冒険者ギルドのロビーでみた、一つの肖像画と、その下に記されていた名前を思い出す。
ロック・ダイアモンド
冒険者ギルド創設者
「.........ロック、お前ならできる」
「ああ!!そうとも!!」
そうして、冒険は終わり、俺たちを暖かい朝焼け空が出迎える。