第二百二話 伝説を刻む者
戦闘を終えた俺たちは三人で宝石を取り囲む。大柄な赤子ほどの大きさのダイヤモンドの輝きは、俺たちの心をうっとりとさせる。
「........これほどの金剛石、折半したとしても大変な額になるでしょう」
「ははは、こんなものをみせたらあの商人....ひっくりかえってしまうだろうね」
「.......リイさん、ロック、奥へと進みましょう」
「ええ、踏破した証を手に入れなくては」
「僕たちの伝説を刻もうじゃないか」
そうして、奥にある小さな空洞へと足を進める
なかには女郎蜘蛛迷宮で見たような拳大ほどの魔石がある。
「.....あれが、踏破の証か、二人ともあれは僕がもらっても構わないかい?この街の連中を手懐けるの使いたいんだ」
この旅に名声なんてものは不要だ。
「ああ、ロックが持ってけ」
「ええ」
「感謝するよ」
ただ、そのまえにリイへと伝えなければならないことがある。女郎蜘蛛迷宮では、あの魔石を取ったことでトラップが発動した。あの異常な空に、強力なボス、またトラップが発動する可能性が高い.....。もし発動して、現代へ帰ることになるならば、俺はリイに伝えなければならないことがたくさんある。俺は、別れの悲しみをグッと堪え、リイへと向き直る。それを察したリイも、俺の顔を真剣だが、穏やかな顔つきで見つめる。
「リイさん、俺、この時代に来てあなたに会えて良かった。リイさんに会えなかったら、俺の心はとっくに壊れてました.....三百年後に帰っても、絶対リイさんのこと忘れませんから!いままでありがとう!リイさん」
「ええ、私も貴方に会えて良かった。私のこれまでの不幸は、貴方との出会いという幸運への帳尻合わせだったのでしょう。私も決して貴方のことを忘れません。それでは、朋友よ....お元気で」
「.....じゃあ、とるぞ」
そうして、ロックは魔石へ手を伸ばす。
俺は衝撃に備えて目を瞑る