表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

214/391

第百九十九話 俺たちの覚悟

......まずい。あの耐久力......このままでは魔力が尽きた俺とロックが殺され、援護を失ったリイもやがて殺されるだろう。今まで1番の絶望だ。リイの発勁もロックの操る魔術も、そして俺の反射も通じない。俺の切り札であるヒーロースーツも通じないだろう。考えろ、考えるんだ。そんなとき、ロックが乾いた思考に水を注ぐかのような発言をする。

「.....一応、共有しておくが、この迷宮の魔物の死体はハンマーで砕くと粉々になる。だから、もし、巨大な鉄のハンマーかなにかをあの体にぶつけることができれば.....な、といってもあの虎の体格はおよそ5m.....そんなおおきなハンマーなんてないがね」


「それだ!!!ハンマーだ!!!!」

リイもまた気がついたようだ、ただ、その顔は暗いままだ。

「たしかに、私が能力を解放して全身を鋼にすれば勝機はあるやもしれません。しかし、ただ理性を捨てて力任せに殴るだけでは、あの肉体を砕けるとは思えません」


「.......それでも、そうするしかないならば、俺はリイさんを信じます」

俺が今までみてきたリイは、誇り高い理性の詩人だ。彼ならば、獣性に打ち勝てる....はずだ。

「............であれば、私も覚悟を決めましょう」








僕の魔術も、獣人の体術も、黒髪の特異な力もあの獣には通じない。はっきり言って絶望だ。さきほど、逃げるつもりはないと言ったが、それは勝機があると考えたからだ。勝てない敵と戦うなど非合理の極みだ。

なんなんだ、あの二人は....あの獣人が理性を失うことと引き換えになんらかの力を解放できると言うのは、この際置いておこう....ただ、今まで一度も成功しなかったくせして、その力をこの土壇場でコントロールしようだなんて理解不能だ。

それになんだ、あの二人......あいつらは自分自身を信じているんじゃない。自分を信じてるようで、その瞳に映る互いを信頼しているんだ.......心底、理解できない。

ありえない、この状況では......二人が虎の相手をしている間に逃げるのが最も合理的な正解だ。絆なんて、命の前ではゴミクズ以下の価値だ。それに、この判断は何ら責められるものじゃない、彼らとて、いまさら僕がいようがいなかろうが、関係ないはずだ。

だから、彼らに「勝ち目がないようだ....僕はこんな場所で死ぬのはごめんだから、消えさせてもらうよ」と言ってさっさと逃げよう。

さあ、言うぞ!!







































「引き続き、僕が魔術であの虎を足止めする。その間に、その鋼質化とやらをモノにしろ!いいな?」






ああ、やっぱりだめだ。僕には眩しすぎるんだ、君たちの信頼が....

僕も、いつの間にかその輝きに魅入られていたんだ。


どうか、君たちの美しい信頼の輪の中に.........一時だけでも、僕を加えてくれないかい?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ