第百九十七話 金剛石 Ⅰ
そうして、俺たちは迷宮の最深部へと辿り着いた。そこは、これまでと同じく洞窟ではあったが、これまで岸壁にまばらに存在するのみだった結晶や宝石が、今度は逆に壁や床を構成している。まるで、自分が宝石の中に入ってしまったかのような、そんな気分であった。それをみたリイは感嘆の声をあげる。俺とロックも釘付けだ。
「...........美しい」
「ええ、こんな美しい景色みたことない...」
「.....あんな汚い街の地下にこんな場所が広がっているなんてね」
ただ、そんな甘美な感覚を食い破るかのように現れたのは巨大な虎であった。「臆病者の石」が眩く光る。
「Guruuuuuuuuuuuu」
おぞましい呻き声をあげて俺たちを睨み付けるその瞳は無機質でありながら明確な「殺意」を感じた。
「あれが、この迷宮の主......まずは小手調べといこうか」
と言うとロックは魔術を詠唱する。
「岩よ、我が矛となりて、魔を貫け」
そうして生み出された巨大な岩の槍が射出刺される。
ただ、その槍は虎の肉体の前に砕け散る。
「......紅玉に翠玉、蒼玉とくればあの虎は金剛石いったところでしょうか」
「金剛石...ダイヤモンドですか.......では、あの魔物は金剛虎とでも呼びましょうか」
「お、おい!!僕の魔術が弾かれた!!獣人!!君の武術で砕いてくれ!!」
「ええ、そのつもりですとも」
そう言うと、リイは金剛虎へ向けて駆け出して、震脚を行う。その後、虎の頭部へ向けて渾身の発勁を放つ。
「破ァァァァ!!!!!」
ただ、金剛虎の体には傷ひとつつかない。
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