第百九十六話 取った狸の皮算用
その怪鳥の心臓部はバスケットボールほどの大きさでその金銭的価値は計り知れない。
「......素晴らしい。かなり純度の高い蒼玉です」
「ああ、これならば高く売れる」
そこで俺はふとした疑問をロックへとぶつける。
「ところで、宝石の売買について伝手があると言っていたけど、具体的にはどんな?」
獣狩りから素材を買い取る商人というのは魔物の皮や爪を武具や衣服の材料として転売することで生計を立てている。彼らは個人の商人であるため、大きな資金力や自分が専門とする商品以外の販路を持たない。ゆえに、買い取る素材に制限をつけるのだ。ということは、鑑賞品としての価値しか持たないうえに新興の迷宮でとれる宝石を買い取る商人がそうそういるとは思えない。彼が売る伝手があるといった言葉を疑うつもりはないものの、興味が湧いた。
「それはね、僕の貴族時代の伝手を使っているんだ」
「ロックって貴族だったんだ.....」
「たしかに、言われてみればどことなく気品のようなものを感じますね」
「まあ、一代貴族だったから、もうすでに没落した後だけどね。まあ、その時の伝手をつかって宝石商に売るんだ。宝石は庶民には縁遠い品ではあるが、貴族はそれを消耗品に近いペースで買い漁るからね.....あの連中は見栄を張るのが仕事だから」
「なるほど....」
「足元を見られる心配もないよ、一度ふざけた見積もりを提示してきた商人の目の前でワイバーンを殺してから、金払いがいいんだ」
そういってロックはニヤリと笑う。
迷宮探索も後半戦だ。