第百九十五話 蒼玉
巨大なサファイアの怪鳥。迷宮の天井付近、およそ10mほどの地点で俺たちを見下ろしながら、口から水鉄砲のような攻撃を放ってくる。それを各々が無効化しながら、様子を伺う。
突然、怪鳥は甲高い鳴き声のようなものをあげる。その鳴き声に呼ばれるように出てきたのは、無数の蠍。その体もまたサファイアのように青く透き通っている。
「.......ロック、あの鳥を魔術で仕留められるか?」
「高度がありすぎる、可能かもしれないが相当な魔力と時間を消費する」
「じゃあ、俺とリイさんでやる。蠍の相手を任せられるか?」
「あまり僕をみくびるなよ」
そういうや否や、ロックは詠唱と共に蠍へ攻撃魔術を放つ。
それを尻目は俺はリイへと向き直る。
「リイさん、あれでいきましょう」
「あれですね、承知いたしました」
リイはそういうと、俺の後方へと下がり、俺の方へと駆け出す。それをみたロックは思わず声を上げる。
「いくら獣人のあんたとはいえ、あの高度の跳躍は無謀だ!!」
「問題ございません、私は彼を信じていますので」
「なにを..言っているんだ.!!」
そのまま、リイは勢いを殺さず俺の頭を踏み台にする、俺はその衝撃を反射してリイに翼を与える。
そのままリイは高度をあげて......
「破ァ!!!」
飛び蹴りで怪鳥の体を粉々にする。ここまでで俺は一つの気づきを得た。ここの迷宮の魔物は魔術に弱く、物理攻撃に強いのではなく。ただ、斬撃に強いというだけだ。日本でもダイヤモンドなんかは世界一硬いなどといわれながらもハンマーなんかを使えば比較的簡単に砕けることがわかっている。ただ、刃物を主要な武器にするこの世界の獣狩りが苦戦するのはそのためだ。
そうして、蠍を殲滅し終えたロックと共に宝石を回収する。
「......【主人公】、君はよくあんなことをできるね。一歩間違えば首の骨が折れてしますうぞ」
「ああ、だから俺はリイさんを信頼しているんだ。彼ならば俺のタイミングに合わせて完璧なタイミングで踏み込んでくれる、と」
「..........それに、僕がまるであの量の蠍を完璧に殲滅できるとまるで疑っていなかった。僕だから良かったが並の魔術師ならば、物量に押し切られていたかもしれない」
「俺たちは仲間だ。協力関係を結んだ以上、それを信頼するのが礼儀だ」
「......理解できないね」
そんなロックへリイが追撃とばかりに口を開く。
「それに、私と【主人公】さんがあの怪鳥を倒すと言った時点で、あなたを私達の言葉を信じられて、蠍の相手に集中しておられた......あなたの行動も信頼と言えるでは?」
ロックは顔を赤くしたのち絞り出すかのように声を出す。
「.........かもな」
そうして、俺たちは破片の中心にある怪鳥の心臓へと目を向ける。