第百八十七話 裸の王様 Ⅱ
そうして、僕たちは迷宮へと潜る。今回の目的は金稼ぎではなく、空の異常の解消とそれに付随する名声を得ることだ。そう手下へと言い聞かせて、今回は上層部の安価な戦利品を拾わない。高難易度迷宮においては自分の荷物の重さ一つが大きく生死を左右する。そうして手下が時間を稼いでいる隙に結晶のゴブリンやルビーの鳥などを僕の魔術で仕留めていく。
....日頃から思っているのだが、この世界には強さの物差しが少なすぎる。剣士であれば段位である程度優劣を付け加えることができるが、魔術師や斥候職の優劣や、異なる流派の剣士同士の優劣、獣狩りにおいてはチームの連携力などを比べる手段は存在しない。なので、討伐依頼をしたい場合や強い味方や護衛なんかを得たい場合は、やれ「あの魔物を倒した」だの「〇〇迷宮から生還した」などといった不明瞭な基準や出所のはっきりしない噂話に頼るしかない。僕自身もこの二人を見つけるまで相当苦労した。
それに、僕たち獣狩りの立場があまりにも低すぎる。庶民や商人なんかは僕たちが獣を狩らなければ、まともに生活できないくせして僕たちを見下している。それに、命懸けで手に入れた素材が必ず金になるかと言われればそうではない。あの、こちらを馬鹿にした商人どもの顔をぶん殴ってやりたいと思ったことは一度や二度ではない。
加えて、獣狩りの間でも魔物や護衛依頼の取り合いも頻発している。そういったものを管理するシステムがないゆえに、僕たち獣狩りは職業倫理というものを持ち合わせない。金にならないと判断すれば依頼をなげだすこともあるし、美味しい依頼を同業者が受ければ邪魔もする。
なにか、獣狩りの実力の優劣をつけ、僕たちの身柄を保証し、管理するシステムが必要であると僕は考えている。
.....まあ、こんな地底からそのようなことを叫んだところでどうにもならないのだが。
などと考えながら迷宮を進んでいくと、中層へと辿り着いた。ここからは未開のエリアだ。
気を引き締めるようにと、手下へ告げさらに闇へと潜っていく。