第百八十四話 宝石箱
俺とリイは迷宮へと足を踏み入れる。迷宮の内部は洞窟のような感じであり、至る所に宝石を含んだ石が転がっている。壁面や天井にも宝石が埋まっており。まさに天然の宝石箱といった様相であった。一瞬、食レポで有名なとある芸人が脳裏をよぎったが、押さえ込む。
肝心の敵はというと、宝石のような結晶体で体を構成した魔物だ。ゴブリンやワイバーンといったオーソドックスな魔物が体を宝石へと変質させて襲いかかってくる様は、美しく幻想的ながらもどこか不気味だ。便宜上、クリスタルゴブリンやクリスタルワイバーンなどと呼ぶことにする。
「こりゃ、すごい.....こいつらの死体ってやっぱりダイヤなんですかね.....」
リイは先ほど砕いたクリスタルゴブリンの死体のかけらの一部を掴みじっと見つめる。
「いえ、残念ですが....ただの透き通った石です....それほど高い価値を内包しているとは考えにくいです....が、綺麗ですね。ここが迷宮であるということを忘れてうっとりしてしまいそうです」
「リイさんなんでも知ってますね!流石です!」
「いえ、知識人の嗜みです」
「へえ〜」
そんなこんなで先へと進む。そのまえに欠片をいくつかポケットへとしまう。アンジーへのお土産だ。女の子はみんな光り物が好きだろう。「クレしん」の赤子もそうだったように。
そうして、俺たちは迷宮を進む。