第十七話 反撃の狼煙 前編
長らくお待たせしました。
「!?」
何が起こったんだ。俺は火なんて吹けないし、火属性魔術なんてものも当然使えない。しかし、事実としてワイバーンは体の大部分が熱によって融解し、死んでいる。考えられる可能性は3つ
①誰かが火属性魔術で俺を間一髪助けてくれた
②ワイバーンが勝手に溶けた
そして、③俺がワイバーンを殺した。
まず、②はない。自分で言っておいてあれだが無茶苦茶すぎる。最も現実的なのは①だが人の気配もしないし、位置関係から考えても俺に気づかれず、かつ俺に当てることなく火属性魔術で攻撃するのは不可能だ。そうなると、にわかには信じ難いが、消去法で③となる。とりあえず、冷静に状況を整理してみよう。俺は、ワイバーンのブレスが俺に命中するその刹那に防御力強化呪文を自分に施した。そうしたら、攻撃を仕掛けたワイバーンが逆に死んだ。まるで、俺の未来の姿をそのまま鏡に映したように....。ん?鏡?.....まさか、そういうことなのか?ありえない、いやしかし、もう、そうとしか考えられない。俺の防御力強化呪文は防御力強化呪文ではなかったのだ!!俺が防御力強化呪文だと思い込んで使っていたものは相手の攻撃を反射する魔術だったのだ。っと、調子に乗るのはまだ早い。この魔術について知らないことが多すぎる。射程範囲は?物理攻撃は跳ね返せるのか?消費魔力量は?早く試したい、俺の可能性を。今までは心底出合いたくなかった魔物共に、今は心の底から逢いたい。
「出てこいよおおお!!トカゲ野郎!!」
思えば、今ままでの人生成功体験というものをしたことがなかった。
俺には友達がいなかった。
ーしょうがない、俺は無口で無愛想だから
ヤンキーに目をつけられてイジめられた。
ーしょうがない、頭が悪くてヤンキー校に行くしかなかったのだから
家では腫れ物扱いをされていた。
ーしょうがない、俺は母さんの連れ子だから
パーティーを追放された。
ーしょうがない、俺が弱いから
....だが、もう違う。こんな俺にも手を差し伸べてくれたゴルドに。こんな俺を暖かく迎え入れてくれたメルトとハンゾーに。そして、こんな俺を好きになってくれたアンジーに。彼ら恩返しができる、彼らと肩を並べることができる!
ここからじゃんじゃん更新していきます。