第百七十九話 剣豪伝説 Ⅶ
私は相方であるホワイトと共に、疲労が溜まった体を癒すべく休暇の旅行に来ていた。私たちが今滞在しているのは、「アルトーレ」という街で、街全体に張り巡らされた水路が美しい景観を生んでいる街だ。通称「水の都」と呼ばれているそうで、近くの湖でとれた魚をつかった料理が絶品だそうだ......というのは全てホワイトからの受け売りだ。
私としては、体の疲労を取り除くことさえできればどこでもいいのだが、ホワイトの強い勧めもあってこの街を休暇を過ごす街として選んだ。この街は、キャメロンから三日程東進し、到着したカハートという街から二日ほど北進した地点にある。ただ、故郷には見られない美しい景観で、来て良かったというのが本音である。
「へえ.....結構綺麗な街並みじゃねえか」
「....ああ」
「ま、お前はそう言うの興味ねえか」
「まあな.....ただ、美しい街並みではあると思う」
「はん、もっと素直になればいいのにな」
「......五月蝿い」
「へいへいすんませんね....にしてもよお、あのカハートとか言う街....クソみてえな治安の悪さだったな」
「...ああ、住人は皆、獣のような目をしていた」
「ちがいねえ、あの街の連中、野犬みてえだった」
....思えば、このホワイトとも二年の付き合いか....私がこの地へと来た頃、こいつもまた同様にこの地へと来たばかりだった。なにか、不可思議な引力に引かれ、私とホワイトは出会った。出会って一日もしなうちに、互いの素性を明かし合い、この奇妙な世界を共に歩こうと誓い合った。この男とは妙に気が合うのだ。かつての故郷にはいなかった、私と対等な者。私を「バカ」と笑い、私を「友」と呼ぶ。
それは、前の世界の常識で考えれば無礼なのであろう。
以前の私であれば問答無用で斬り捨てていただろう...しかし、今はそれが心地よいのだ。
私の隣でくだらないことを喋るこの男は世界で一番頼りになる男で、私の唯一の友人である。
ただ、そのようなことは決して口には出さない。
そうして、私とホワイトは水路に浮かぶ船へと乗る。この街での移動は舟によるものが主流なようだ。舟は男が二人と漕ぎ手が一人乗ってしまえば窮屈に感じる程度のものではあるが、生前に洛陽の御所で行った舟遊びを思い出す。
この舟は一体、何処へと向かっているのだろうか、もし行き先を決めることができるならば、それが修羅の道であるようにと私は願いを込める。もはや、うろ覚えになってしまった経を口ずさみながら。
私はポケモンの映画はラティ兄妹のやつが一番好きです