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第百七十二話 神様はいなくても

数日後、俺たちは水屋の一室にいた。スコーピオンの討伐以来の達成をノキザルへと報告し、詳しい話は俺とリイの怪我が治ってからということで、療養していた。そうして、今日俺たちは改めてノキザルと最後の話し合いをする。

「....スコーピオンの討伐、心より感謝いたします」


「いえ、それで、報酬の件ですが....」


「ええ!!契約通り...いや、その額の三倍お支払いいたしましょう!!」


「いえ、俺たちが受け取るお金は前金のみで結構です」


「.........え??どういった理由で?」

ノキザルは見るからに困惑している。


「その代わりお願いがあります、俺たちが受け取るはずだった額やスコーピオンに収めるはずだったお金の一部でも良いので、それらをこの街の孤児を支援するために使っていただけませんか?」

これは、この数日間にリイと話し合って決めたものだ。


「.....具体的には?」


「孤児院のようなものをつくっていただきたいんです。もちろん、無理はなさらなくても結構です。俺たちの報酬金で炊き出しなんかをしていただくだけでもかまいません」


「.........では、色街の外れにある教会を改修して孤児院を作りましょうか.....職員は....しばらくはうちの宿から出しますが、ゆくゆくは引退した娼婦の方々を雇って.......」


「あ、あの、言っておいてあれなんですけど、すぐに決断されるんですね...」


「ええ、我々『ヤマト』の民は義理と人情を重んじるのです。それに、この街の温泉宿経営者の大半はスコーピオンによって迷惑を被ったヤマト人....資金の当てもありますので」


「な、なるほど」


そうして、ノキザルは本当に商売仲間や領主を引き込んで孤児院建設を進めた。ものの三日もしないうちに教会の改修作業がはじまり、早ければ来月には第一陣の入居が始まるそうだ。



たとえ、この世界に神様はいなくても......いや、そんな都合のいい存在なんかいないからこそ.....俺は俺のやり方で人を救う。


明日、その中の誰か一人でも笑っていてくれれば.....この偽善にだって、少しは意味があるはずだ。


これにてスコーピオン編は完結すね


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