第百六十話 神様
私の母は死んだ。獣狩りから、性病を感染されて。母は娼婦だった。父が誰かはわからないが、きっとどこかの獣狩りだろう...どうでもいい。そんな私は生きるために市場でスリへと手をそめる、スコーピオンとかいうところの大人の指示で。生きてゆくにはこれ以外の道はない。今日も市場で不用心な獣狩りから財布をスった。簡単な仕事のはずだった。
しかし、神様はひどいやつだ。財布の持ち主と一緒にいた獣人が凄まじい速度で私の後を追ってくる。臭いで嗅ぎつけられたのだろうか.....そういえば最後にお風呂に入ったのいつだったっけ。
ただ、地の利はこちらにある、私は、売春婦が集まって客をとる、通称「雌犬通り」を走り抜け、なんとか色町の外れにある朽ちた教会へと逃げ込む。間一髪、獣人が来る前に、古いオルガンの中に体を隠すことに成功した。その中は暗くて、狭くて、とても嫌な気分になった。しばらくして、仲間の男もここへとやってくる。そうして、私は息を殺して身をひそめる。
二人は、なにやら話している。私をどう痛ぶるか相談しているのだろうか、それともどちらが先に私を慰み者にするかの相談であろうか、どちらにしろ、痛いのは嫌だ。そんな未来を想像すると、三日ほど前に、カラムとかいう男たちに蹴られた脇腹が痛む。しかし、私は溢れそうのなる涙や声を必死に抑えて、体をできるだけ縮める。意味なんてないのに。
.........ここならば見つからないはずだ、いや、見つからないでください。
ただ、神様は私なんかには目もくれていないらしい。二人の足音や声がこちらへと迫ってくる。会話の中にはオルガンといった言葉が聞こえる。
私は、必死に記憶の中の母を思い出して、助けを求める。
どうか、痛いのだけはやめてください。やるのなら、さっさとやってください。はやく、ママにあわせてください。
そうして、暗闇に光が差し込む。
神様なんて大嫌いだ。
アンジーちゃんを曇らせることができないので、別の女の子を曇らせることにしました!!!
ブクマ感謝!!