第百五十三話 トウモロコシ
部屋に帰った俺たちを待ち構えていたのは豪華な食事であった。
刺身に、肉料理、季節の野菜を使った前菜、のような和食の他にもオムレツやウインナーといった洋風なものまでそろっている。机一面に広がる料理たちに俺たちは驚きを隠せなかった。
「.......いくらなんでも、厚遇しすぎですよね」
「ええ.....これを食べたが最後、後戻りできなくなるような気さえします」
「まるで...ヨモツヘグイですね...」
そんな俺たちの様子を見たのか、料理を運んできた女中が開く。
「こちらのお食事は、お部屋の料金に含まれておりますので、心置きなくお召し上がりください.....こちらにお酒のご用意もございます」
と言って、酒まで用意してくる。そこまで言われては食べないわけにもいかない。
「で、では、ありがたくいただきます」
女中が部屋を出るまでは食事には手をつけず、女中がさったタイミングで、リイが全ての食べ物に毒がないか入念にチェックする。
「......毒物や薬のにおいはいたしません.....無臭の毒物の可能性もありますが....そこまでする理由もないでしょう」
「なら、食べちゃいましょうか」
「ええ」
そうして、俺とリイは酒を片手に食事を始める。料理は一流の宿に相応しい繊細な味付けであった。味付けはどことなく日本風でこの街が見た目だけでなく中身まで故郷に近いと言うことを再認識した。もし、この件が片付いた暁には、ヤマトを訪れるのも良いかもしれない。
「俺、三百年後どころか、故郷でもこんな美味いものたべたことないですよ」
「私もです。このような繊細な味付け、生まれて初めてです」
そうして、俺たちは言伝の伝言役についてアレコレ話し合うも、酔いとこれまでの疲れのせいで大した成果はなかった。ただ、こういった日があってもいいだろう。
リイが、トウモロコシを大層気に入っていたのが印象的だった。肉じゃないんだ....