第百五十一話 水屋
俺たちはノキザルの案内で宿へと向かう。たどり着いた宿は、三百年後のものと比べれば見劣りするものの立派な宿であった。
「こちら、水屋にございます」
そうして、案内に従って受付を行い、部屋の鍵を受け取る。もちろん、お代はタダだ。
「......ほう、素晴らしい」
美しい内装を見てリイが呟く。
「ええ、ここは温泉もすごいんですよ」
そう言うと、ノキザルが口を開く
「当宿へいらしたことが?」
「はい、以前に別の仲間と.....」
「それはそれは.....では、今回は以前よりも快適に過ごしていただけるように尽力させていただきます」
そう言うと、ノキザルは俺たちへ一礼をして奥へと去っていく。
「では、私たちも参りましょうか」
そうして、俺たちも部屋へと向かう。俺たちの部屋は二人用にしては広めの部屋で、露天風呂までついていた。
「露天風呂まで.......」
そこでリイが口を開く。
「......... 恩人とはいえ、これほどの部屋を迷いなく提供できるものなのでしょうか.......」
たしかに、いくら助けられたとはいえ、こんなポンと部屋を提供できるものなのだろうか。露天風呂付きでこの広さ、三百年後の水屋の料金から考えれば、一番高い部類にはいるはずだ。
「......俺たちが獣狩りだからいちゃもんつけられる前に先手を打ってお礼をした、とかですかね....」
「...おそらくそうでしょうね。せっかくの雰囲気に水をさしてしまい申し訳ありません」
「いえ、リイさんのそういうところ、いつも助かってます」
これは本音だ。
こうして、とりあえずの「納得」を得た俺たちは荷解きをして、大浴場へと向かう。