第百四十七話 友よ
敗北を受け入れたアーサーはゆっくりと口を開く。
「我らは、彼の地で死に、この世界へと流れついた。マーリンは原因を究明し、ブリテンの地へ帰還してみせると息巻いてはいたものの、結局は不可能であった。いつしか、我らはこの迷宮を守護せねばという狂気のようなものに取り憑かれていった。我らは無数に湧く魔物や、この地へ迫る人間を迎撃し続けた。そのような過酷な役目に耐えるために、円卓の騎士たちは一人、また一人と人間を辞めた。マーリンもいつの間にか、ブリテンへの帰還という目標を忘れ、この迷宮の守護こそが使命であると信じ込むようになったのだ。足利よ、なぜ、我が同胞はこのような悲劇の運命を歩まねばならなかったのだ?我らの魂と誇りをかように弄んだのは誰なのだ!!」
【剣豪】は、その一人の王の慟哭を静かに聴くのみだ。
「ああ!主よ!!我らは一体なんなのだ!!!」
【剣豪】はやっと口を開く。
「.....アーサー、お前の無念....私が晴らして見せよう。我が友の誇りを踏み躙った悪魔の首をお前の墓前へ供えると、ここに誓おう」
「......そうか、友よ.....ありがとう」
そう言い残すとアーサーは動かなくなる。しかし、その顔には人間のような柔らかい笑顔で満たされていた。