第百四十四話 将軍
【剣豪】とアーサーの斬り合いはもはや、彼ら以外には目視できなかった。
「素晴らしいな、貴様のような騎士が円卓にいれば、ブリテンは崩壊しなかったのかもしれぬ」
「.......私は人に首を垂れることが大嫌いでな。お前の首を狙っていただろうな」
「.....それもまた一興」
ただ、現実問題として、アーサーの技術と未来視によって【剣豪】の命は風前の灯火であった。
【剣豪】は未来視を打ち破るべく、その頭脳を回転させる。
「(こういったことは慣れんな......全ての行動を看破される、死角からの奇襲も、予想外の一手も全て対処される......)」
そんな、思考の堂々巡りを経て【剣豪】の頭脳は単純な結論を出す。
「(では、対処させなければ良いではないか)」
【剣豪】は未来視によって見えた未来を、対策できないような状況へアーサーを追い詰めるという策を立てた。
【剣豪】は全身に分散させていた攻撃を、アーサーの剣の刃と柄の接合部分へと狙いを定める。
「......我が剣を狙うか.....無意味だ」
「..........案外わからんぞ」
そこからさらに数百合に及ぶ剣戟が繰り広げられる。
そうして、その数が数千にもなろうかというとき、ついに綻びが生まれる。
それは、【剣豪】がアーサーの剣の接合部分を狙い、アーサーはそれを意に介さず【剣豪】の体を切り刻む...そんな攻防の最中に起こった。
【剣豪】の刃は、何千回と繰り返した通り、アーサーの剣の接合部へと迫る。その瞬間、【剣豪】これまでの戦闘による負傷で口内に溜まった己の血をアーサーの顔に向けて吐き出す。
「小細工は無意味だ」
アーサーは、それを顔を傾けてかわす。
その瞬間、【剣豪】の刀はアーサーの左腕に深く食い込む。
「私の目的が、お前の剣の破壊などとというのは....お前の思い込みだ」
「なるほどな....血で私の注意を逸らし、私の慢心と慣れからくる油断の隙を突くか.....見事だ」
「しかし、我が伝説はこの程度では終わらない」
そう言うと、アーサーの剣が光を纏い始める。
「我が聖剣の名はエクスカリバー」