第百四十三話 歪な人形
【剣豪】とアーサーがちょうど斬り合いを始めていた頃、ホワイトの魔力は底をつきかけていた。
あれからも、度重なる魔術戦を重ね、消耗戦を強いられ、息も絶え絶えなホワイトに反して、マーリンは多少、額に汗がつたっている程度だ。彼らの実力差は歴然であった。
「もう終わりかい?いやあ!!大したことないのかもね......意外と」
マーリンはどこからか取り出した椅子に腰掛け、ホワイトを見下す。
「ははは、そうだな魔術師としては俺の完敗だ」
「ま、そういうことだね.....悪いけど、君を殺した後、僕は王の援護に向かうよ.......」
「最期に、一つだけ、質問をしてもいいかい?」
「ああ、構わないよ.....君たちの国では冥土の土産っていうのかな?.....でも、自分で調べるんじゃないのかい?」
ホワイトは最後の嘲りを無視して質問する。
「これまで戦った騎士どもは明らかに人間離れしていた。不可視の狙撃や膂力、イカれた技術....どれもが異常だ。人間の技術どうこうの話じゃねえ.....奴らは歪すぎる。得意な一点においては【剣豪】の野郎を完全に凌駕してやがるにも関わらず、他の部分はあくまで人間の到達点だ。魔術だろ?教えろよ」
マーリンは「ふむ」と顎に手を当てると、語り出す。
「まず、前提として、僕たちは君たちとは違うんだ。僕たちはあの日、時や場所は違えどブリテンの地で死んだ。そうして、肉体から乖離した魂をこの世界に無理やり縛りつけた人形....それが僕らさ。異界から肉体ごと転移した君たちとは根本的に違うんだ。」
「それで、本題なんだけど。結論から言うと、僕はその歪さに干渉したんだ。魂と肉体の乖離に漬け込んで、この世界における彼らの肉体を無理やり改造した。この世界の支援術師が使う強化魔術を使ってね。これが、君が知りたかったこと.....満足したかい?」
「ああ、全てわかったよ。これで心置きなく.......」
「死ねる....ということかな?」
「ちげーよ、あんたを殺せる」
ホワイトは、最後の抵抗とばかりに詠唱を始める。
「天道、昇れ」
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