155/374
第百四十二話 輪郭
アーサーの剣はゆっくりと、しかし着実に【剣豪】の命へと向かって進軍して行く。
いずれ、【剣豪】の体力が尽きれば、彼に待つのは死であるということは自明であった。しかし、【剣豪】は迫り来る死の運命へと抗い続ける。しかし、【剣豪】とて無力ではない。彼の異国の剣技は、アーサーの極める騎士の剣術や、この世界の剣術といったものとは大きく乖離していた。それゆえに、アーサーをもってしても完全に防ぐことを不可能にしていた。
「.....これが、ランスロットらを屠った剣技か」
アーサーは一瞬、亡き友を想う表情になる。
【剣豪】は、その刹那の隙を突き、袖の下に仕込んでいた苦無をアーサーの瞳へ投擲する。
しかし、アーサーはそれをまるで知っていたかのようにかわす。
「視えるのだ、我を襲う全てが、我へと訪れる全てが.....」
「なぜ、全てを失って初めて、全てを守る力を得たのだろうか」
「それが、主の思し召しなのか.................」
【剣豪】は、、己の体に纏わりつく「死」の香りが徐々に輪郭を形作っていく感覚を覚えた。