第百三十五話 不義の騎士 Ⅱ
ランスロットの一撃は先ほどよりも重みを増し、攻撃はさらに激しくなる。しかし、それは激情によるものではない。【剣豪】はそれを防ぐことに精一杯であった。ランスロットの攻撃は、人間的な甘さを一切排除した機械の如き精神によってなされたまさに人間離れした所業である。
均衡は完全にランスロット側に傾いたかのように見えた。しかし、【剣豪】の瞳はその綻びを捉えつつあった。
「(怪我をした肘で、あれほどまでの威力と連撃......いずれ限界がくる)」
【剣豪】はいずれ来る限界の時を確信し、静かに牙を研ぐ。
ただし、ランスロットとてその限界を察知していた。彼は短期決戦に持ち込むべく、さらに攻撃の手を早め、力を込める。その、剣戟はもはや嵐のような激しさであった。そんな最中、ランスロットは呟く。
「...........貴様に、負けるわけにはいかんのだ。我が剣は今度こそ王のために」
「.......不義の騎士が忠義を語るか.......獣のような浅ましさだな」
【剣豪】の挑発にもランスロットは動じない。ただ、攻撃の手を強めることでそれへと答える。徐々に【剣豪】の体が切り裂かれ始める、ただ、急所へその攻撃は届かない。
「...口ほどにもないな」
ランスロットは機械的な表情のまま言い放つ。今度は【剣豪】がそれへと答えるかのように、足元に落ちていた石をランスロットの剣へ向けて蹴り飛ばす。
「......小癪な」
ランスロットはそれに対して、何かするまでもなく石を剣で弾き飛ばす。その一瞬、ほんの少しズレた軌道の合間を縫うかのように、【剣豪】の刃がランスロットの左目を切り裂く。
「.......どうやら、待つまでもなかったか」
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