第百二十四話 後の祭り
ホワイトと【剣豪】はさらに迷宮を進む。ホワイトは迷宮内の装飾や構造をを興味深そうに観察している。対照的に、【剣豪】は興味なしといった様子で迫り来る騎士たちを斬り捨てている。
「.......ホワイト、熱中しすぎではないか?先ほどから、援護すらしないではないか」
「....ああ、すまんすまん....でもよお、あまりにも酷似してんだよなあ.....『アーサー王伝説』当時の建築様式と.....まるで、その時代からそのまんま、切り取ったみたいに」
「......ふむ、偶然ではないのか?城というからには戦術的な視点で建造されたのだろう?ならば、地形や気候が似た地域ならば似通うのも自然はないか?」
「....へえ、ちゃんと将軍だったんだな...お前」
「.....初めて出会った時に話したであろう?」
「そーいやそうだったな」
「......ただ、死した今となっては詮無きことよ」
「そうだな、死んじまってからアレコレ言ってもしょうがないわな」
そんな軽口を叩き合いながらも、【剣豪】は異常を察知する。そこにはおよそ五十体ほどの騎士が隊列を組んで迫っている。
「.......ホワイト、敵だ。次は手伝え」
だが、すでにホワイトは思考の世界に没頭している。
「....へえ、あの鎧も当時のものによくみられる形質を忠実に守っているな......」
「................はあ」
「おい!お前、今!ため息つきやがったな!!」
「..............」
【剣豪】の怒気に押されたのか、ホワイトは手を迫り来る騎士団へと手を向ける。
「大気、凍てつけ」
その瞬間、ホワイトを中心にすさまじい冷気が放たれる。騎士団はその冷気に反応できずにただの氷の彫像へと成り果てる。
「【剣豪】、あとは頼んだ」
「..........やればできるではないか」
そう言うや否や、【剣豪】は騎士団へ向けて駆け出し、刀で彫像と化した騎士団を両断していく。ものの一分もしないうちに騎士団は全滅した。
「......ホワイト、こいつらはなんなのだ?獣とは思えん、しかし人でもない」
「さあな、ただ....猿の野郎が使った傀儡とそっくりだな。人の魂を使役する魔術か、死体を操る魔術か....いずれにしても趣味が悪いな」
そうして、彼らは迷宮の中層へと至った。