第百二十五話 隻腕の騎士
ホワイトと【剣豪】の前に立ちはだかるのは隻腕の騎士。それをみたホワイトは口をひらく。
「キャメロンなんて地名に、西洋風の騎士、おまけに隻腕の騎士ときたら....あれだなまるで、アーサー王伝説だな」
「なんだそれは?」
「英国......南蛮の島国の王様とその配下の騎士団の伝説だよ」
「.....その騎士団とやらは強いのか?」
「ああ!!、そりゃもう、神話的な強ささ」
「.......であれば、この騎士の相手は私一人でする......手出しは無用だ」
「はいはい」
敵の前であるというのに、軽口を叩き合う二人。しかし、隻腕の騎士もまたそんな二人を前に静止している。
「........いざ、参る」
【剣豪】が刀を構えるのを見ると、隻腕の騎士も槍を構える。
「へえ、武士道ならぬ騎士道ってか.....ケモノとは思えないな.....いや、そういった習性の類か?それとも何か魔術的な......」
ホワイトが思考の世界に没頭している間にも【剣豪】と隻腕の騎士は激しく殺し合う。あたりには、凄まじい金属音と火花が舞っている。
「.....ふむ、獣にしてはやるではないか」
【剣豪】の技術に劣勢ではあるものの抗ってみせる騎士の姿に【剣豪】は純粋な賛辞を述べる。
「......その槍捌き.......摂津の中村新兵衛を思い出す鋭さだ」
【剣豪】は、騎士の突き出す槍の軌道を読み、かわす。そのままガラ空きになった騎士の胴体を横に両断する。
「.......ただ、これで終わりだ。お前が隻腕でなかったならば、勝負はわからなかった」
騎士は電池が切れたおもちゃのようにその場へ倒れる。
「へえ、【剣豪】お前にしてはやたら褒めるじゃねえか」
「......私は常に強者への敬意を忘れない。それが、剣士の礼儀だ」
「......やっぱ、面白えやつだなお前は。見てて飽きねえよ」
「..............」
「そんで、楽しめたかい?」
「......ああ、これほどの戦士と死会えるとは.....とんだ拾いものだな」
「.....そりゃよかったよ」