第百十四話 鬼さんこちら
俺たちは、コゼットとルーナの家があるサンゲツの街に向けて進んでいく。もう、すでにレイナンの街を出て一日が経過していた。御者はリイとルーナが交代しながらノンストップで進んでいる。平野を抜けて山へと入った俺たちはえも言われぬ不安感に襲われながらも、何か決定的なものに出会うこともなく平和な道中であった。
「......少々、怖いですわ」
そんな、山道を見てコゼットがこぼす。
「大丈夫よ!リイさんと【主人公】さんはお強いんだから、それにいざという時は私が.....」
すっかり、俺たちの前ではコゼットにタメ口で話すようになったルーナがコゼットの肩を抱きながら慰める。出会った当初とはすっかり、立場を逆転させた二人だが、こちらの方がより素に近いのだろう。
「そ、そうですわね....お二人はお強いんですものね!」
コゼットはルーナの言葉を聞き、俺たちへも同意を促すような口調で自分を鼓舞する。そんな二人を見た俺はほんのイタズラ心で、口をひらく。
「.......実は、同業者からの噂で聞いたのですが....この山には、『人喰い鬼』が出るそうで......もしその噂が本当ならば....いくら俺とリイさんでも......」
それを聞いたルーナは「ヒぃッ!!」と声を上げるとプルプル震え出す。コゼットに至ってはもう涙目だ。それを聞いた御者席に座るリイがやれやれと言った顔で口を開く。
「......なんでも、その人喰い鬼は人間の...特に若い少女を好むそうで....頭から一息に丸呑みにしてしまうそうです」
お前も乗るんかい。
見ろよ、二人とも身を寄せ合って涙目だ。流石にやりすぎたと思い、口を開く
「...と、いうのは全部冗談です。今俺が考えた作り話でーす」
なるべく明るく言う。それを聞いた二人は目に見えて安堵して、口をひらく。
「ふふふ、そんなところだと思っておりましたわ....まったく、淑女への接し方というものがなっておりませんわね」
コゼット、おい、お前涙目だったろ。
「.....わ、私もわかっておりましたとも」
ルーナも同調する。二人のこういった反応を見るとやはり年頃の少女なんだと思う。俺やリイが失ってしまった青さがある。どうか、この二人がこのままでいられますように.......
「わっ!鬼だ!!」
「「ヒッ!!」」
..........やっぱ、からかい甲斐があるなこの二人。そうして、俺たちは先ほどよりも霧が濃くなった山道を進んでいく。
めっちゃリアクション増えてる!!!感謝!!